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Googleからの出資を受けてKARTEはどう進化する?プレイド代表の倉橋に聞いてみました

「これはKARTEが目指す世界に近づく”小さな”一歩なんです」

そう語るのは、プレイド代表取締役 CEOの倉橋 健太。2011年にプレイドを創業し、2015年にCXプラットフォーム「KARTE」をリリースし、「データによって人の価値を最大化する」というミッションに向けて邁進してきました。

倉橋は総額約27億円の資金調達、GINZA SIXへの移転から約1年半の期間を経て、Googleからの資金調達を終えた今、プレイドは次のフェーズに移りつつあると語ります。超長期目線を持って開発してきたKARTEは、次にどんなフェーズを迎えるのか。倉橋に話を聞きました。


プレイドはGoogleから何を学ぶのか?

──Googleからの資金調達が発表されました。どのような考えで調達に至ったのでしょうか。

かねてから、KARTEの大規模なデータ解析にGCPを活用していて、昨年はGoogle Cloud SaaS イニシアチブへの参加企業として選ばれるなど、協業が良好に進んでいました。

今回の資金調達をきっかけに、さらに協業を深めることで、事業成長を加速できると考えています。これはプレスリリースでも触れたことですが、マシンラーニングやAIなどGoogleの最新技術をKARTEを通じて提供していくなど、多面的な協業を予定しています。

──様々な面で協業を図っていくのですね。

協業以外にも影響はあると考えています。Googleは、インターネットの時代で最も成長した会社。そういう企業が出資だけでなく様々なサポートで応援してくれているのは、僕たちがやりたいことを前進させる上でも重要です。

また、プレイドもGINZA SIXに移転してからの約1年半で組織が約80名から約150名まで拡大しています。今後どのように組織を作っていくかを考えたときに、世界で最も成長したデジタル企業に学べることは無数にあると考えています。

──組織づくりの面でも参考にできる面がある。

良いプロダクトのためには、良い組織が必要なので、良い組織をつくることにもコミットしなければいけません。Googleの人材は思想や熱量があり、元起業家の人も当たり前のように働いています。だからこそ、偉大なことを成し遂げられている。

2019年10月に3回目を開催したCX DIVEのテーマは「コンサマトリー」という言葉で、熱量を持つ、楽しむ状態をどう作るかというものでした。偉大なことを成し遂げるには、優秀な個が集まり、いかに熱狂する状態を作るかが大事だと考えています。

マーケティングSaaSの枠を超えたプラットフォームへ

──今回調達した資金はどのように投資する予定なのでしょうか。

KARTEのプラットフォーム化に投資します。KARTEは導入企業における流通解析金額が今年1兆円を超えるなど、マーケティングSaaSの領域で非常に伸びています。今後は、マーケティングの領域にとどまらず、KARTEのプラットフォーム化を目指して、注力していきます。

すでに、DX(デジタルトランスフォーメーション)やEX(エンプロイー・エクスペリエンス)といった領域のご相談を企業からいただくなど、マーケティングという枠に留まらない動きは始まっています。企業からいただいている反応から、様々な目的での企業のデータ活用においてKARTEへの期待値が高まっていることを日々実感しています。

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──KARTEのプラットフォーム化に向けて、どのような動きをしていくのでしょうか。

今後、マーケティング領域はもちろんそれ以外の幅広い領域でもサービスを提供していくためには、プレイドだけでなく多様なパートナー企業との連携強化は重要だと考えています。Googleとの戦略的パートナーシップもその一つといえるかと思います。

展開する領域の拡張に加えて、グローバルへの展開を見据えた採用強化も予定しています。KARTEのポテンシャルは日本にとどまらないと考えています。今後、海外に展開する意欲は持っていて、すでにアジアの一部でPMF(プロダクト・マーケット・フィット)などを行っています。

──領域だけでなく、エリアも広げていくのでしょうか。

KARTEは開発開始当初から、グローバルでの技術・ビジネス両面の長期変化を鑑みて設計してきました。その背景もあり、KARTEのポテンシャルは日本にとどまらないと考えてきました。先行しているPMFの結果を見ながら、タイミングや方法については慎重に検討しています。

ただ、KARTEを進化させていった先、どこかのタイミングで本格的に海外へと展開することは間違いなく、その未来においてもGoogleとの協業は非常に有効だと考えています。

KARTEのコアな強みは何かを再確認できた

──今回の調達をきっかけに、これまでよりもさらに大きな挑戦へと乗り出そうとしていますが、何か意思決定する上でのポイントなどあったのでしょうか。

約1年半前に総額約27億円の資金調達を実施して、GINZA SIXに移った前後で「KARTE for App」と「KARTE Datahub」と2つのプロダクトの大きなリリースがありました。これらをリリースしたことで、より広い顧客に利用してもらうことができるようになり、多様なデータと連携して深く使ってもらうことが可能になりました。

こうしたリリースに加えて、Google アナリティクス360やSalesforce Marketing Cloud、最近だとLookerやDataRobotといった様々なグローバルプロダクトとの連携もあり、実績を積み重ねてきたことで、大きなプレイヤーがKARTEを無視できなくなってきたという手応えがあります。

そのおかげもあってKARTEは様々なプレイヤーとのアライアンスも進んでいるのですが、関わるプレイヤーが増えたことで「KARTEのコア」が次第にクリアになってきています。コアが明確になり、活かすための土台の環境が整ってきたと考えたことが意思決定の背景にはあります。

──発見されたコアな強みとは?

エンドユーザーをどこよりも解像度高く可視化できるというのがKARTEのコアです。それはどのマーケティングツールにも、企業のファーストパーティの環境にもありません。KARTEを導入すると、ユーザーがものすごくよく見えるようになる。

もちろん、KARTEはいろいろな機能が利用できます。エンドユーザーが見えるだけではなく、働きかけるという前提で作られているので。ただ、「コアは何か?」を突き詰めて考えると一人ひとりがよく見えること。

この「よく見える」ということが、様々な領域で必要とされてきている手応えがあります。そのことからも、KARTEが価値を発揮できるドメインはもっと広げていけると考えています。

──そのコアは他のツールには代替されないのでしょうか?

世の中のツールはユーザーをよく見ることに主眼が置かれてはいません。どう定量や数字で把握し、成果を上げていくかがメイン。人をよく見ようとする機能はほとんどのツールにはなく、あったとしても後付なんですよね。

KARTEとは、根本の哲学が違う。KARTEは最初からブレずにそこを目指してやってきています。哲学が異なると、実装の仕方も異なるので、KARTEのコアは他のツールには代替されないと考えています。

──元々考えていた価値を再確認できたということですよね。

事業を続けるといつのまにか、いろんなものがコアな価値に見えてきてしまうんですよね。例えば、「アクションと可視化がワンストップで可能」、これも重要なんです。でも、何がないと始まらないかを考えると、ユーザーがよく見えること。

創業初期から「インターネットの構造上、企業にはユーザーが見えていない」ことが今後全ての企業の課題として顕在化してくると考えていました。そこに回帰した感覚があり、自信は深まりました。ただ、よく見えるだけでは価値ではありません。強みを価値に変えるのがこれからの挑戦です。

イノベーションにはプロダクトと人の両輪が重要

──強みを価値に変えていくためには何が必要なのでしょうか。

これまでのKARTEは、とにかくいろんな価値を詰めこんだ状態で渡して、あとは導入先の企業に試行錯誤してもらっていました。

これまではプロダクトの可能性を徹底的に広げることを優先し、プロダクトドリブンで高速に開発と実装を行なってきたのです。今後は、エントリーマネジメントを含めて改善し、KARTEをどう使ってもらうか、どう使いこなして定着してもらうかが重要なフェーズになってくると考えています。

そのためには、人の伴走が必要です。ちゃんと人が企業を学習するために伴走していれば、もっと使いこなしてもらえるようになるはず。そのためには、プロダクトと人の両輪でいかに顧客と向き合うかが重要です。

──プロダクトと人の両輪というのは元々考えていたことなのでしょうか。

最初からプロダクトだけで100%カバーできるとは思ってはいませんでした。ただ、KARTEを提供し始めてみて、自分たちが描いている理想的な世界観は、思っていた以上に顧客の現在地からは遠いということがわかったんです。このまま開発速度が上がっていき、プロダクトが良くなればなるほど、顧客の現在地との乖離が生まれてしまう。

──その乖離を埋めるための「人」だと。

そうです。発見した乖離をプロダクトで歩み寄ろうとし過ぎると、KARTEというプロダクトの先進性がなくなってしまう。プロダクトに関しては目の前のニーズばかりを追いかけて近距離で思考してしまうと間違うと思っています。

「プロダクトのスタンスを変えずにどうやってKARTEを利用してもらうのか?」を考えた結果、人が企業に伴走して利用を後押しする必要があるという結論に至りました。

──どうして「人」じゃないとダメだったのでしょうか。

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KARTEを導入してくださる企業を理解しようとした場合、今目の前にある「点」だけを見て理解できるほど単純なものではないんですよね。「なんで、この企業は現在こうなっているんだろう」と考えると、常に企業は点じゃなくて線なんです。

これまではどう成長してきて、どう事業展開してきたのか、どんな企業文化なのか。それらを踏まえた上で、今の企業が置かれている状態の理由がわかる。様々な情報や要素が複雑に絡み合って企業の今がある。僕らが描いている世界観に向けて進んでいくためには、この複雑に絡み合っているものに一定伴走しながら学習し、紐解いていかないといけません。

──その複雑さの学習は人が地道に行わなければならない、と。

テクノロジードリブンによる破壊的なイノベーション、と言われると一夜にして大きく変わる印象があります。が、企業はそれほど単純じゃない。仮にテクノロジーで解ける課題が部分部分にあったとしても、企業は変わるコストが大きすぎると思っている。そうすると、変化は生まれない。

企業とどう関わり、何を押せばどう変わるのか。それを私たちはちゃんと学習していかないといけない。そこは人じゃないと学習できないと思っています。だから、企業に伴走し、その複雑さを理解し、トランスフォームの仕方を学習するためのチームが必要なんです。そこから得られた学びを、いかにプロダクトに反映するかが重要。

──それで人を増やしているんですね。

人が増えること自体が嫌だなと感じるメンバーも中にはいると思います。もちろん、それもわかります。小さい人数のほうがかっこよく見えたり、安心感があったり、コストがただ低かったりする。ただ、それで偉大なことが成し遂げられないのであれば、変わらないといけない。ここから先の学習サイクルを大胆に回すためには仲間がさらに必要です。今、組織的にも変化のタイミングを迎えていると感じています。

人の可能性を開いて、仕事を楽しむ人を増やすためのSaaS

──KARTEをプラットフォームへと進化させていった先にはどのような未来があるのでしょうか。

最近、改めてCXというコンセプトと僕らのミッションである「データによって人の価値を最大化する」という言葉は、僕らが実現したい社会を表現していると思っているんです。

この先、テクノロジーがどんどん進化していくと、差分は「人」になると思うんですよね。人の思いや考えをどうやってシンプルに流通させるか、人のポテンシャルをどう発揮させるか。それが本質に近いと思っていて。

──なぜ、そこまで人に?

コモディティ化しない本質的な価値は、人からしか生まれないと思ってるんです。そのためには、人がイキイキと働くって重要で。CXを突き詰めていくと、仕事自体を楽しくしないといけないという結論に行き着くような気がしていて。テクノロジーで働く人の体験を良くした結果、エンドユーザーの体験がよくなる。人の力を活かす、可能性を最大化する。そうしないと仕事が楽しくなくて人は働くことに意義を見出せなくなるし、社会に良い体験が増えないと思うんです。

CX DIVEのセッションを見ていると、楽しんでいる人は最強だなって思いますね。その人の思いや熱量が高まって、ゾーンに入っているような状態がベストだと思います。プレイドは、中長期ではこういう人たちを増やしていきたいなって思います。究極、KARTEが入ってない会社で仕事するのは楽しくないから嫌だ、くらい言っていただけるように頑張りたいですね。

──その状態を作るために、SaaSというプロダクトの形式はフィットしていたんでしょうか。

そう思います。SaaSはコストを下げる、自動化するといった文脈で語られることが多いですが、それはプロセスであって、その先に何を実現したいのかが大事だと思っています。人が熱狂してる状態ができて初めて、価値創出の持続性や再現性が生まれるはず。それは最終的に内発的動機づけでしか実現できないんですよね。SaaSは、そもそもの形態が持続的な価値創出であるはずなので、プレイドが目指しているミッションに寄り添ってくれていると思います。

SaaSに関して言えば、カオスマップに掲載されるマーケティングSaaSって7000個くらいあって。「それって健全な状態なんだっけ?」って疑問なんですよね。たくさんのプロダクトを使いこなして成果をあげるより、洗練され絞り込まれたプロダクトで成果を上げられたほうが楽ですよね。KARTEとしては、向き合う先をひとつに絞れるような構造を作っていきたい。

KARTEも、達成したい目的に対して一番シンプルな解になっているかどうかを常に考えています。次のフェーズでは、KARTEの強みを徹底的に価値化しながらも、創造的に自己否定したいと考えています。その2つの挑戦が同時に走るのがプレイドの次のフェーズです。

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