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今、プレイドは何を考えているのか?発展の途上でスタートアップへの投資を決断した理由を解説します

本日、プレイドはEmotion Techへの出資と戦略的パートナーシップ締結を発表しました。なぜスタートアップから、スタートアップへの出資を行ったのか。これは私たちにとって無謀でもなんでもなく、スタートアップでありながら超長期を見据えてミッションを遂行していくために必要な一歩だと捉えています。今回の出資について考えていることや締結までのプロセスを、プレイド代表取締役CEOである倉橋健太にインタビューして、振り返ってみたいと思います。

事業シナジーは考えつつ、本質的な価値に注目

まず、Emotion Techとの戦略的パートナーシップのもと、どのようなことを考えているのか。株式会社Emotion Techは、顧客調査から顧客体験価値の分析・向上をサポートする「EmotionTech」、従業員調査から従業員体験価値・エンゲージメントの分析・向上をサポートする「EmployeeTech」を提供するスタートアップです。

現代はデジタル化によって定量化できる領域が広がり、わかりやすい指標に対して企業の行動が最適化されていってしまっています。購入の量と顧客満足度の高さは必ずしも比例しません。モノは買ったときより、使ったときの満足度が大切です。CX(顧客体験)は1つの瞬間1つの体験を最大化することではなく、その全てを束ねて構成されるものです。世の中は短期的な視点、もしくは局所的な視点での取り組みが増えてきましたが、企業は顧客を「一人ひとり」として捉える環境を構築し、その関係性への投資を始めなければならない。デジタル化がさらに進むことによって、本来の価値への回帰が起こるのではないかと考えています。Emotion Techの事業は、そういう大きな流れを捉えた事業だと認識しています。

彼らが提供している「NPS® (ネット・プロモーター・スコア)」を軸としたCX(顧客体験)向上のソリューションは、プレイドの展開するCX(顧客体験)プラットフォームであるKARTEを組み合わせることで大きな価値を発揮すると考えています。

たとえば、KARTEを使うことで取得、分析できるサイト上でのリアルタイムな行動データと、ユーザーの声であるNPS®をはじめとする定性データを組み合わせてユーザーを解析し、一人ひとりのユーザーに合わせたアクションが可能になります。それにより、モニタリング(理解)とアクション(体験設計)の両面がシームレスに繋がり、持続的な顧客体験の向上が可能になります。

昨年、Googleからの資金調達を発表した際のnoteでは、「イノベーションにはプロダクトと人の両輪が重要」ということについて述べました。私たちのビジョンを実現していくうえで、プロダクトは言うまでもなく重要ですが、企業と伴走する「人」によるアプローチも欠かせません。

Emotion Techとの戦略的パートナーシップでは、企業が提供するサービスのCX(顧客体験)における課題の抽出や調査における強力なソリューションを開発する他、調査から戦略策定、施策実行、フィードバックの取得といった一連の活動において企業と伴走するコンサルティングサービスなども拡充させる予定です。

こうした事業上のシナジーなども考えてはいますが、今回の出資の本質的な目的はそこだけではありません。

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創業時から目指していた未来へと進んでいくために

まず、KARTEがどのような世界を目指して生まれたプロダクトなのかを改めて触れておきたいと思います。KARTEは、人軸でリアルタイムに行動をトラッキング、そのデータを分析し、自動手動を問わずリアルタイムで顧客に働きかけることを可能にするプロダクトです。

アクションするというKARTEの側面がどうしても目に映りやすいですが、KARTEにおける一番のコアはユーザーを解像度高く、かつリアルタイムに可視化できる解析エンジンとそのデータベースを育てること。アクションという側面はパフォーマンスを生み出すことはもちろん、その解析エンジンにとっての良い学習機会の創出という役割を担っています。

解析エンジンの詳細や開発秘話はこちらのnoteでCPOの柴山とCTOの牧野が語っている記事で詳しく触れているのでこちらを読んでもらえたらと思います。

スタートアップは世の中への影響力がゼロの状態から事業を始めます。市場における発言力はもちろんありません。市場にエントリーし、認めてもらい、影響力を高めていって、より自分たちが実現したい世界のために進んでいく。まだ課題の顕在化していない全く新しいアプローチによる解析エンジン、それだけだと価値証明はなかなか難しいと考えていました。そのため、解析基盤に加えユーザーへのアクションまでをワンストップに提供することで価値を表現していく必要があると考えました。

そこで、最初は戦略的にシンプルでわかりやすい領域から入りました。新規性を維持しつつも市場の理解を高めようとオンサイトでのマーケティングをエントリーとして選定し、アクションもポップアップに限定し提供開始したのです。その後、KARTE TalkやKARTE Datahub、KARTE for App、Usability Scaleなどの機能を拡充していきました。

ここ最近の1〜2年ではKARTEの認知はかなり広がってきた実感があります。事業の土台、すなわち市場における一定のパフォーマンスも作ることができてきた。ここから先は、創業期から考えているプロダクトのコア、すなわち解像度高く「ユーザーを知る」ことにプロダクトの重心を移行しながら、長期視点での投資を加速させていきます。

市場の本格的な盛り上がりに備えるために

リリース前から想像していたとおり、KARTEはその実効性とカバー範囲を徐々に広げながら着実に成長してきています。

想定外があるとしたら、影響を与えられる範囲が想像していたよりも大きかったこと。

2018年頃からは「これは思ったよりも時間がかかる事業だぞ」と気合を入れ直して、根気強く長期目線で捉えないと社会のためにならない、と考えるようになりました。では、いつになったらその切り替わるタイミングがやってくるのか。

スタートアップは、進むべき方角を見定めるよりも、タイミングを見定めるほうが困難。何年も先のタイミングを読み当てることはほぼ不可能だと思います。「来る」と思っていたそのタイミングは、予想外にやってくる。そこまでに成長を続けながらもどう準備を整えるのか。タイミングに対する戦略はめちゃくちゃ重要だと考えています。

今、KARTEは数年後に顕在化するであろう市場に備えて、準備をしているフェーズ。本格的に市場が到来する前に、圧倒的なプロダクトとチームを作っておかなければなりません。こうした中長期での戦略における大きなトライの1つがEmotion Techへの出資です。

KARTEが描きたい市場は自分たちだけですべてカバーできるほど小さな市場ではなく、現在地からかなり遠いところにある。どれだけ分散的に同じ未来を目指せる仲間を集めるか。Emotion Techとの関わりは、その第一歩です。


コロナの影響もあるこのタイミングで出資を決めた理由

新型コロナウイルスの影響もあるし、そもそも未上場であるプレイドが今のタイミングで出資したのはなぜか。それを疑問に思う人もいると思います。

Emotion Techについては事業に関してはもちろん、数年前からCX Day(現 Experience Day) というイベントなどを開催していることも知っていて、近い世界観を見ているだろうなと感じていたんです。

良いタイミングでつながりが生まれたこともあって、社長の今西さんと会ってみたら事業、人、組織、どの観点から見てもプレイドおよびKARTEとフィットするだろうなと確信しました。色んな角度で議論を重ねて、目指している未来の重なり、長期戦の覚悟、事業の相性、何よりもこの人を信じられるなと思ったことが今回このような形に至った理由としては大きいですね。

最も意思決定する上で重視したのは、「価値観の合う仲間や、強い思いは希少性が高い」という考え。これは、プレイドでの採用の感覚にも近いかもしません。プレイドの場合、現在必要なポジションという視点から単に採用することはあまりなく、この人に共感できる、なにか新しい風を持ち込んでくれるんじゃないか、なにか価値を発見してくれるんじゃないかという仲間を採用してきています。

Emotion Techの出資は、プレイドの仲間集めで大切にしてきた感覚に近いものです。協業による売上やリソースといった短期的な事業シナジーだけを目的にしたものではなく、多角的に評価し、中長期の目線で考えた上での選択です。

採用において良い人をとりたいときはスピード感が重要なのと同様に、今回の出資は多少急ぎました。それは、遅れたら遅れただけ、チャンスは減ってしまうから。いけるときにいく、動けるときに動く。これは半分直感的なところもありますが、重要な意思決定だと思っています。

前例のないディールのために議論した3つのこと

取締役会およびステークホルダーにおける共通理解を作るプロセスに時間をかける必要がありました。ようやく理解を作れてきたタイミングで、新型コロナウイルスの影響があり、改めて議論する場面もありました。「この状況下で小さくない投資するのはどうなんだ」「金額やタイミングなど見直したほうがいいんじゃないか」などの意見が出る中で、僕たちは3つのことを意識して改めて目線を作っていきました。

 1.この投資には不確実性があるけれど、ネガティブな変化が起きたとしても、キャッシュ面のリスクはカバーできているということ。定量で、いくつかの強度のネガティブケースを基に試算、議論しました。

 2.短期的にどういった事業シナジーがあるのかを示しました。両社でディスカッションを繰り返しどうコミットするのかを定量的にかつ具体で議論しました。

 3.最も重要なこととして、超長期でプレイドの戦略を遂行していくために、ミッションを共にできる強いコミットメントを有しているチームと仲間になる重要性について議論しました。

この投資は、リスクヘッジやコストマネジメントを強めつつも、超長期を見据えて必要だと。短期的な収益のためではなく、掲げているミッションに近づくために仲間や思いを集めるための投資なんだと。このプロセスはとてもハードなものではありましたが、良い学びになりました。

夢や理想を掲げると、共感する仲間が引き寄せられる

今後、プレイドとEmotion Techとは連携を強めていきます。プレイドの社内から、Emotion Techとの取り組みに参加したいと多くのメンバーが手をあげました。この機会がワクワクするものとして社内にも伝わっている。


遠くの未来を見据えて、愚直に取り組み続けてきたから、素晴らしい機会に巡り会えた。ファクトがあるわけではありませんが、こういう機会は企業における各所での活動とその振る舞いから引き寄せられるかどうかが変わるのだと思います。

だから、自分たちも変わらず普段から夢や理想、思いを掲げ続けて、同じような夢や理想を持った仲間を引き寄せていきたいですね。今後もこうした投資を含む戦略的な事業活動を積極的に展開していきます。

自分たちの今回の取り組みを、スタートアップの新しいモメンタムとしても証明していきたいですね。(終わり)


注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。


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