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カスタマーサクセスを経てPMMで活躍する 〜異なる2職種に通ずるスキルとは〜

プロダクトの価値を伝え、届けるための取り組みを様々なステークホルダーと連携して実行する「プロダクトマーケティングマネージャー(以降PMM)」。矢ノ目はプレイドにて、カスタマーサクセスを経験した後、PMMを務めている。
なぜカスタマーサクセスを経てPMMへキャリアを進めることになったのか、カスタマーサクセスで培ったスキルや経験がどのようにPMMで活きているのかを、矢ノ目に聞いた。

Profile
矢ノ目 亮(やのめ りょう)
経営工学修士号を取得後、新卒でサイバーエージェントに入社。ソーシャルゲームプランナーとしてキャリアを始める。2015年に当時7名のLink-Uに加わり、『マンガワン』をはじめとしたマンガアプリのグロース全般を担当する。マザーズ・東証一部市場への上場を経験した後、2021年にプレイドに参画。現在はプロダクトマーケティングマネージャーを担当。

toC モバイルサービスのマーケターがプレイドのカスタマーサクセスに入社した理由

――これまでの経歴を教えてください。
2013年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。スマホの普及により今後ますます成長していくと感じられたインターネット産業に軸足を置き、勢いと活力がある企業で働きたいと感じた点が入社の決め手でした。当時は、全社的にモバイルシフトに取り組むタイミングで、その中心にソーシャルゲーム事業があり、会社を選ぶのと同じ基準でソーシャルゲームプランナーをファーストキャリアとして選択しました。

その後、2015年に数名規模のLink-Uに転職をしました。当時「マンガワン」というマンガアプリをローンチしてまもないタイミングで、私自身、ネイティブアプリの隆盛とマンガのデジタル化は今後の必然的な流れだと感じたこともあり、同アプリのマーケティング、グロースを担う役割で入社しました。その後同アプリは同社のフラッグシップサービスとして累計2,000万ダウンロードに到達、同社の株式上場を経験しました。

Link-Uでの経験を経て、より大きな社会課題をプロダクトで解くことに挑戦したいと考えるようになりました。特に、自分がこれまで携わってきたデジタルサービスのマーケティング・グロース業務の中には、"データを本質的な意味で扱えず、むしろデータに踊らされて、データのために仕事をするような負が存在している"と感じることがありました。そんなことを考えているタイミングで出会ったのがプレイドでした。

プレイドは「データで人の価値を最大化する」をミッションにしています。このミッションに向かうことで、自分の意識にあったようなテーマ・課題感にチャレンジできると考え、応募しました。

――プレイドでカスタマーサクセスを担当することになった経緯を教えてください。
転職活動時はビジネスオープンポジションで応募しました。数名のプレイド社員と話し、会社やプロダクトへの理解を深めていくなかで、顧客に提供するソリューションを想像するにあたって第一に必要なのは顧客の理解だと考えるようになりました。

また、私自身toBビジネスの経験がなかったこともあり、まずは「顧客理解・顧客視点」を身につけることがプレイドで活躍するために大切な要素だと感じ、オファーを受けたタイミングで顧客に一番近い立場で接することができるカスタマーサクセスを希望職種として伝えました。

課題設定・解決こそ、カスタマーサクセスとしての顧客に対する価値

――カスタマーサクセスとして担当していた業務について教えてください。
エンタープライズ系のアプリを提供しているクライアントを中心に担当していました。クライアントに徹底的に伴走し、クライアントの事業における伸びしろは何か、伸びしろの背後にある、現状の課題は何か。その課題解決の優先度はどうなるかを一緒に考え、「KARTE」を用いて解決することに取り組んでいました。

――顧客と共課題設定から行っていたということですね。具体的なエピソードを教えてください。
集英社様の『少年ジャンプ+』というマンガアプリでの取り組みを紹介します。

週刊デジタルマンガ媒体として、常に各作品の最新話を盛り上げたいという意識が集英社様にはありましたが、一方で、最新話データを活用したユーザーコミュニケーションの構築は、できていない状況でした。そこで、KARTEを通じて最新話の更新データに連動したアプリ内コミュニケーション施策を構築しました。KARTEで取得している『読者の行動データ』と作品ごとの最新話の公開日情報といった『少年ジャンプ+』側に存在するデータを接続することによって、クライアントの課題を解決に導くことができたのです。

――『少年ジャンプ+』様のプロジェクトで、矢ノ目さんはカスタマーサクセスとしてどのような役割を担っていましたか?
『少年ジャンプ+』は、デジタル上の体験であったとしても、発売日に雑誌を手にとり最新話を読むことのワクワク感とそのファン同士の同期感という顧客体験を大切にされていました。このクライアントが持っているビジョンや価値観を羅針盤に、KARTEを用いて、いかによりよい顧客体験(CX)を具現化するかという点を大切にし、解決策を提案しました。

――CX向上のため、カスタマーサクセスが果たす役割は大きいですね。
そうですね。カスタマーサクセスとしては「いかに顧客を飽きさせない課題設定を顧客と一緒にできるか」が重要だと思っています。そして会社規模では、カスタマーサクセスやプロダクトを含めた全てのソリューションを活用し、いかに面白い課題(もはやテーマと言った方が適切かもしれません)を顧客と描き、解決していくかが私たちの存在の本質だと考えています。

カスタマーサクセスからPMMへ

――カスタマーサクセスからPMMになった経緯を教えてください。
2021年9月にプレイドにカスタマーサクセスとして入社した当初は、数年間はカスタマーサクセスに腰を据えて働くことをイメージしていました。

しかし、2022年7月に全社規模での組織アップデートがありました。その目的のひとつに「顧客ニーズの多様化やプロダクトラインナップの増加により、プロダクトの価値を適切に顧客へ伝え、導入顧客に価値を実感してもらう」という狙いが含まれており、それを行う役割として、PMMが初めて定義されました。

そこで、過去にサイバーエージェント、Link-Uでモバイルサービスのマーケティング・グロースを担当していたこと、プレイドのカスタマーサクセスとしてモバイルアプリ系の顧客を多く担当していたことによって身に着けた「顧客解像度」を活かせそうということで、モバイルアプリ向けCXソリューション『KARTE for App』のPMMを任せてもらうことになったという経緯です。

――カスタマーサクセスからPMMへロールチェンジすることになり、どのように感じましたか。
率直にチャンスだと捉えました。私自身、カスタマーサクセスを担う過程で、顧客ニーズの多様化、プロダクトの複雑化に伴い、プロダクトデリバリーの領域には蓄積された課題=大きな伸びしろがあると感じていたからです。

カスタマーサクセスとして個別の顧客にソリューションを届ける役割の重要性を理解しつつ、カスタマーサクセスやセールス、カスタマーサポートといったメンバーが届ける「プロダクトそのものを顧客の手元でより価値の高いものに変えやすい形にする」という切り口でも顧客に貢献できる可能性を強く感じました。

具体と抽象を行き来するバランス感覚が求められるPMM

――PMMとしては、どのような業務を担当していますか?
プレイドではPMMを「プロダクトを顧客に届け、売れるようにする役割」と定義しています。PMMのポジションが生まれた背景でもありますが、これまでプレイドは「プロダクトアウト」の思想が強い企業でした。

しかし、近年の顧客ニーズの多様化や高度化、競合するプロダクトの台頭など変化の速い市場で高いサービス価値を出し続けるために、プロダクトアウトのアプローチに加えて、プロダクトマーケティングの必要性が高まってきています。

現在は『KARTE for App』のプロダクトを担当し、プロダクトが誰にどんな価値を提供するのか、市場におけるポジショニングはどうなのかといった「プロダクトと顧客の関係性の整理・言語化」や、パッケージング(どの商品パッケージにどこまでの機能を含ませるのか)、プライシングの改善やプロダクトへの改善要望の対応、サービスサイトやプロダクト紹介資料のアップデートなどを担当しています。

※矢ノ目がPMMを担当する『KARTE For App』は2023/3/23にメジャーアップデートしました。詳細は以下をご覧ください。

――PMMとして仕事をするには、どんな知識やスキルが必要ですか?
知識はそれぞれ必要なタイミングで積極的にキャッチアップすることを前提にしつつ、スキル面で唯一選ぶとすると、具体・抽象思考のバランスです。

PMMに就いて、カスタマーサクセスとして従事していた際と比べ、ベースの思考の抽象度が大きく異なることに気づきました。カスタマーサクセスは各顧客の具体的な課題に対して具体のソリューションを提供することを常に考えていましたが、PMMは群としての顧客の課題を抽象的に捉え、その汎用的(=抽象的)なソリューションをプロダクトとして届けることを責務としています。

一方で、具体に紐づかない抽象は具体に落ちえないとも日々の取り組みにおいて肌で感じており、手足を動かして具体に飛び込む意識と、それをいかに整理して抽象化する思考のバランスが求められると考えます。そういったことが好きなのであれば、PMMというロールはより楽しめるのではないかと思います。

カスタマーサクセスを経験したからこそできる高い解像度での顧客理解

――カスタマーサクセスで得た知識・スキルや経験は、PMMの業務にどのように活かされていますか?
カスタマーサクセスを経験して得られた最大の資産は「顧客解像度」だと思います。顧客は何を理想としていてその上で何が課題なのかはもちろん、個社ごとに存在するリアルな内情についてはカスタマーサクセスとして顧客と伴走するからこそ得ることができる情報です。

特に、私はモバイルアプリを展開しているクライアントを複数社担当していたこともあり、その領域における顧客課題の共通項、非共通項を一定構造化して理解できたと思っています。これはPMMとして個社ごとに存在する課題をプロダクトを通じて汎用的に解く思考をする上で大いに役立っています。

そして実際にプロダクトがどのように使われているかを高い解像度で見られたことも貴重な経験です。自身が直接担当するクライアントがなくなった今でも、可能な限り現場に実際に出て一次情報に触れることは心がけています。

――課題設定力やその前提になる顧客解像度が身に付くというのは、カスタマーサクセスの一般的なイメージとは異なるように思います。
このようなスキルを得られるのは、顧客に深く入りこむプレイドのカスタマーサクセスだからこそであると思います。関連した事例をもうひとつご紹介します。

あるアプリを運営しているクライアントは、KPI設定が明確でなく具体的な理想状態を定義できていないが故に、理想と現在地のギャップを把握できておらずそれを埋めるアクションにも行き詰まっている状態でした。それに対し、現状の分析から課題の探索、そしてアクションの評価を行うKPI設計まで、取り組みの前段としてサポートしました。ここまでできると自ずとクライアントからも施策アイデアが出始め、実際にプロダクトの活用が進むようになりました。

CX(顧客体験)プラットフォームを謳うKARTEはそのサービス特性上、それをソリューションとして当てはめる顧客課題が千差万別です。つまり顧客に活用され価値を発揮するには課題設定の質が最重要ポイントとなると考えています。そして顧客が解決したくなる本質的な課題を設定するためには高い顧客解像度が必要になるのです。

――カスタマーサクセスからPMMというキャリアの先に、プレイドで実現したいことはありますか?
私はKARTEの思想が大好きでそれが描く未来を楽しみにしている身なので、そのためにできることがあれば特に職種にこだわりはないです。もしかすると周囲からそれが透けて見えてPMMというロールを割り当ててもらったとも思うのですが(笑)。

プロダクトのポテンシャルとしても現状にとどまるものではないと思っていますし、もっともっと大きくて根深い課題を解いて価値貢献できるプロダクトを創り上げていきたい一心です。これからも役割に固執することなくその目的に向かって取り組んでいきたいと思っています。