技術と人と仕組みで、課題と解決策の接合点を探す。プレイドのカスタマーエンジニアの仕事に感じる価値
顧客とプロダクトの間をつなぎ、プロダクトの可能性を最大化する役割であるカスタマーエンジニア。顧客のニーズや課題を理解するコミュニケーション力と同時に、課題解決のための技術検証やソリューション開発など技術力も求められます。
今回は、セールスとしてキャリアをスタートし、3社目への転職の際にエンジニアに転身、現在プレイドでカスタマーエンジニアとして働く道畑奨吾にインタビュー。キャリアの変遷とその背景、組織の業務内容と抱える課題、働く人たちの特徴と求められる素養などについて話を聞きました。
未経験からエンジニアに。そして、その経験を活かしてビジネスにも向き合う間のポジションが魅力。
――まずは簡単に自己紹介をお願いします。
プレイドでカスタマーエンジニアとして働いている道畑です。大学の文系学部を卒業する際に何となく営業かなと思い、新卒入社した会社と2社目までは営業として働いていました。小規模M&Aの仲介、不動産、化粧品の箱資材など、今思い返しても結構幅広い事業に営業の立場から携わりました。その後、3社目のERPのパッケージシステムを提供する会社にエンジニアとして採用されて、7年弱ほど働いて、2023年4月からプレイドでカスタマーエンジニアとして働いています。
募集要項に書いてある通りに言うと「カスタマーエンジニアは、プロダクトのスペシャリストとして顧客企業及びパートナー企業とプロダクトとの間に立ち、プロダクトを活用できる人を増やすためのアプローチを担う」ポジションです。その中で仕組み化などを主に担当するCRE(Customer Reliability Engineer)ユニットのリードをしています。
――2度目の転職の際に、技術畑にジョブチェンジされていますが、どのような背景があったのでしょうか?
当時20代半ばで「これからの時代はITでしょ」と安易に思い立ちまして(笑)。面接を受けに行った会社が経験やスキルにとらわれないエンジニア採用を積極的にやっているタイミングでして、未経験ながらエンジニアとして採用していただくことができました。半年ほど研修をしていただいて、その後は会計システムの開発エンジニアとして現場現場の毎日で、2年くらいは時間的にも精神的にもかなりハードワークをしていました。
正直、エンジニアとして働き始めた頃は辛く感じることも多かったのですが、前向きに変わったキッカケは一つの成功体験でした。先輩たちがずっと調査していたけど解決できていなかった不具合があって、自分が特定と修正ができた時があり、そのときに技術者としての手応えと面白みを感じられたんですよ。
発生条件も特定できておらず、発生している事象に対して何が紐づいているか関連・影響する要素も不明瞭で、調査すべきそれぞれの対象も複雑な部分ばかりでした。何か特殊なことをやったわけではないのですが、全体や具体部分の仕様を地道に丁寧に把握しながら検証を繰り返していったら、原因や全容を特定できて。めちゃくちゃ嬉しかったですね。まだまだ基礎的な力や知識も不足していた時期だと思いますが、それ以降自信を持って働けるようになって、いろいろな案件にも積極的にも関わり、エンジニアとして働くことが一気に楽しくなっていきました。
7年ほどの在籍期間で育休も2回取らせてもらったり、仕事や役割も拡張させてもらったり、エンジニアにジョブチェンジして本当に良かったと思える環境で働くことができましたね。
――その次の環境としてプレイドに入社した経緯を教えてください。
転職をちょうど考えているときにプレイドに声をかけてもらったんですよね。前職で働く中で、技術的なサポートもやりつつ商談の同席やプロダクトの利活用に関してもサポートに入るようになるなど、対クライアントの仕事も任せてもらうことが増えてそれが楽しかった。プロダクト開発に軸を置くよりも、開発バックグラウンドを活かしながら、もっとクライアントに向き合った仕事をメインにできるような役割に立ちたいなと。社内でのジョブチェンジも含めて考え始めたタイミングで、プレイドから届いたスカウトメッセージの内容が、まさに自分の求めていたものでした。
KARTEのプロダクトが面白いと思ったのも大きいですね。プレイドに入るか、KARTEを導入している企業かを転職の軸の一つにしていたくらいで、最終的には面談で「社内にいるからこそプロダクトの改善ができる」と言われて刺さったのが決め手でした。
あと、前職の業績が上向きになったことも自分の中で大きかったです。未経験だった自分を受け入れて育ててくれた恩をめちゃくちゃ感じていたので、少しは恩を返せたかなと思えたタイミングだったので、そろそろ次の環境に行ってみようと思い切ることができました。
――カスタマーエンジニアのポジションは、技術とビジネスの合間というか、やりたい人・やれる人が多くはない役割のようにも思えるのですが。
たしかに、世の中的には間に落ちてしまいがちな仕事を担うポジションだと思います。ただ、シンプルに楽しいんですよね。お客さんから届いた質問や問題を検証するとき、なぞなぞを紐解いているような感覚があります。
個別の問い合わせに対応する場合に限らず、仕組み化や汎用化を考えるときも障害に対応するときも、複雑な要素を洗い出して検証して、どういったアプローチが取り得るか、最適な解に至ることができるかを考える。問題が解決できたときもやりがいを感じますが、過程の部分に魅力を感じています。チームのメンバーが同じような思考を持っているわけではないと思いますし、自分でも少し変わっているのかなと思うこともありますが、やっぱり僕には面白い仕事に感じています。
役割分担をしつつも、個人の興味や意欲によって役割の形をカスタマイズできる。
――プレイドのカスタマーエンジニア組織構造の体制や、どのような業務を担っているのかを教えてください。
現在カスタマーエンジニアとしては、20名弱のメンバーが所属していて、セントラル機能として幅広く対応している「General Customer Engineer」と、各プロダクトのチームを本務とする「Product Customer Engineer」が存在しています。業務内容や役割に大きな差はありませんが、後者のProduct Customer Engineerは、「KARTE Messsage」や「KARTE Signals」など立ち上げ期に近いプロダクトに専門特化した役割を担うメンバーです。
General Customer Engineerが所属する「Customer Engineering Team」は、セールスエンジニア・ソリューションエンジニア・CRE(Customer Reliability Engineering)の3ユニットに分かれて業務に取り組んでいます。
セールスエンジニアは、プロダクトの導入・運用時の商談同席などプリセールス的な動きが主な役割です。パッケージとして汎用的に活用できるものをお客様に対して提案したり、セミナーなどの機会に登壇して事例や活用のポイントなどを説明したり、その名の通り最もセールス活動の最前線に近いポジションです。
ソリューションエンジニアは、主に「KARTE」などのプロダクトや、KARTEの拡張が可能になるPaaS「KARTE Craft」を用いて、世の中のどんなシステムとどのような連携ができるか、そして、どのような課題解決ができるのかを考えて手を動かしていきます。ニーズがあるものに対して事例を作っていく役割で、活用ソリューションを紹介している「PLAID Solution Blog」の更新も主にこのチームが担っています。
そして、私がリードしているCREは、主にサポートに関してオーナーシップを持つチームです。サポートは個別対応になりがちですが、そこをエンジニアリングで広く解くための仕組み化を行っています。プロダクトの技術的説明ドキュメント作成や個別事案への対応、プロダクトへのフィードバックや障害対応など、カスタマーエンジニアが対応する多岐にわたる業務を、いかに効率的・効果的に回せるかを考えて仕組みをつくって改善を続けています。特に誰がどこまでやるかという境界線が曖昧な部分、たとえばカスタマーサクセスやプロダクト開発を担うエンジニアとの連携する業務などは、仕組みを上手く作って回さないと確認・調整工数が肥大化しがちなので注力して取り組んでいます。最近ではAIの導入・活用も行っていて、技術と仕組みの両軸で事業やプロダクトへの貢献を最大化しようとしています。
あとは、プロダクトに障害が発生した際には、カスタマーエンジニアがインシデントマネージャーを、持ち回りで担当します。障害発生の有無に関わらず、だいたい週に1度くらいのスパンで主担当としてアサインされます。インシデントマネージャーは、原因や影響範囲の特定や解決までの手順の整理などを、プロダクト・ビジネス両面の関係者と連携しながら担います。仮に障害が発生した際に手が回らないときは、サブ担当やチーム全体にヘルプしてもらって対応しています。
――Customer Engineering Teamの中の3つの区分や、General / Productの区分におけるローテーションなどは行っているんですか?
今、まさに話題に出ているところですね。たとえば新しく入ったメンバーに一定期間でいくつか回ってもらうことも考えています。ただ、現状も分厚い壁があるわけではなくて、本人がやりたいと言ったらピボットしたり役割のバランスを変えることもできます。もともとカスタマーエンジニアという立場自体が業務の幅を決めておらず、個々人がやりたいことに対して任せる風潮があります。
我々カスタマーエンジニアが、会社のあらゆるチームと接点を持つ中での個々の傾向を見ると、人によってそれぞれ分布が異なります。もちろん会社のために組織として必要な機能は満たしつつということが前提ですが、個人の興味や意欲によって役割の形をカスタマイズできるようになっています。
マネジメントという観点だと、私を含むリーダー陣がメンバーそれぞれの強み弱みやwillなどを踏まえて、誰にどういう役割や業務を担ってもらうかを継続的に話して、少しずつ組織の中に変化があり続けるようにしています。組織としては、Customer Engineering Teamや各ユニットに中長期の目標があって、それに紐づく形で四半期ごとに組織目標を立てて、できたできなかったを振り返るようにしています。
関わる変数が多く、影響も大きい人的コストをいかに適切に下げるか。
――今、そして今後のカスタマーエンジニアという役割や組織の課題を教えてもらえますか?
問い合わせに対応するコストについては、常に課題があります。永続的に改善が必要だという観点も含めてですね。主要プロダクトのKARTEは、多様なニーズに対応できる汎用性があり、それが明確な強みなのですが、対応策や問い合わせへの回答がシンプルなもので済まないケースも多いということでもあります。クライアントが何をしたいのか、どのような環境で実現したいのか、クライアント側もプレイド側も含め関わる人たちの習熟度など、多くの変数があります。
現状、カスタマーエンジニアはもちろん、クライアントの窓口となるセールスやカスタマーサクセスにおいても急激にメンバーが増えています。普通のプロダクトよりも習得すべきベースの知識が多く、プロダクトがどのように利用されているかといった幅も広いので、一定のクオリティの対応を適切な時間や工数で実現できるようになるまで、相応の時間や努力や経験が必要です。また、体系的に情報を取りまとめて活用できているかと言うと、それもまだまだこれからというところです。
情報やデータに関しては、むしろ膨大にあるんですよ。日々たくさんの問い合わせをいただき、社内外でやり取りは発生している。全く同じケースばかりではないですが、抽象化体系化できるようなものも多いんですが、ちゃんと資産にできていなかったのが正直なところです。何がいつ発生しどう対応したのか、情報やデータを正しく貯めて正しく活かしていきたいですし、生成AIの活用も進めています。今年の2月に入社したメンバーが強みと興味を持って取り組んでくれて、加速度的にプロジェクトが進み、サポートサイトやデベロッパーポータルサイトなどをソースに基礎的な情報を提供できる仕組みができつつあります。
カスタマーエンジニアの対応コストが高かったり、リソースが逼迫していていたりすると、ビジネス側からも相談しづらいし、何でも相談してよと言い難い状況になってしまいます。プロダクト開発側にも正しく必要なフィードバックを上げづらくなるし、それは結局ビジネスの負担にもなってしまう。ハブ的な立ち位置な我々だからこそ、本当であればもっと余白を作っておきたいんですよね。ここを改善することで、多くの人が生産性を上げられると思うので、注力していきたいです。
技術による解決や仕組み化とともに、人や組織の力を底上げすることも重要だと思っています。カスタマーエンジニアに求められる力はいくつか観点があると思っていて、プロダクトの知識はもちろん、技術的スキルや相手が何を知りたいのかを紐解く力など、相当幅が広くバランスも大切です。だからこそ、採用の段階や日々のコミュニケーションの中で、メンバーのモチベーションがどこに向いているのか、偏り過ぎていないかなどは意識して見るようにしています。
プロダクトと技術が好きな人が集う組織で、徐々に長い目線の仕事に比重を移していきたい。
―今のカスタマーエンジニア組織には、どういう人がいて、どのような働き方をしていますか?
これまでの経歴については、人によって粒度は異なりますが、ビジネス系の仕事・役割から半分くらい、技術系から半分というところでしょうか。別の記事になってますが、技術スキルや経験がほぼない状態でビジネスサイドの役割からカスタマーエンジニアに転身したメンバーもいたり、最近の入社メンバーだと技術寄りのキャリアの方が続いていたりします。開発の知見は、もちろんあればあるだけ嬉しいですが、コードを触ることに抵抗感がなく、前向きに興味を持って学習できる人であることが基準にはなります。ただ今いるメンバーたちは、基本的にKARTEなどのプロダクトや技術自体を好きな人ばかりですね。
性格的には素直さが求められると思います。多方面とやり取りする仕事が多いので、自分の考えとさまざまな人や要件との折り合いをつける必要があるので、伝えるのも受け取るのも素直な方が向いているのかなと。必要に応じて、ハードめな判断やコミュニケーションもできた方がいいので、硬軟使い分けて事象や人に対峙するのが上手い人が多い気がします。
個別の課題解決に燃えるメンバーもいますが、志向が移りつつあるということも含めて、最近では仕組みに落とす部分が好きな人が多いですね。僕は障害対応にテンションが上がってしまいますが(笑)。目の前で短期的にやらなければならない仕事と、仕組み化や構造の改善などの中長期的な仕事で言うと、普段は3:7くらいの割合で長い目線の仕事に時間を充てるように心がけています。短距離走のような仕事は0にはなりませんし、もちろん重要な役割・内容なのですが、長い目線の仕事に多くの時間と意識を充てられるメンバーを徐々に増やしていきたいです。
働く時間としては、私はリモートワークの際は8時30分頃に仕事を開始し、18時くらいに一度止めて、子どもが寝た後にできる範囲で仕事をやるようにしています。出社の際は、帰りにホットヨガに行って、気持ちと体を切り替えてから帰宅しています。大きい障害が起きた時などは仕事を優先しますし、小さい子どもを持つメンバーもいるので、みんなで柔軟に助け合いながらという感じですね。
カスタマーエンジニアのメンバー同士の仲もよく、全員でも強制でもありませんが、プライベートで1日中遊んでいる人たちもいます。年齢層が比較的近いこともありますが、お互いのスキルや働きを尊敬できていて、好きなもの・課題に感じるものが近いこともあるので、雰囲気の良いチームだと思います。
仕事上の役割もプロダクトが実現できることにも、圧倒的な幅があることが魅力。
――プレイドのカスタマーエンジニアとして働くことで得られる価値とは?
一番は仕事の幅ですね。案件や役割の種類も多く、その中で自分にマッチする仕事を任せられる環境があります。ビジネス寄り技術寄りという仕事自体の幅もあるので、他社と比較しても相当広いと思います。例えば、将来プロダクトマネージャーのような役割に進みたいとして、技術的な知見を深めながら、プロダクトを作る側に重心を置いて経験を積むこともできますし、よりクライアントやビジネスメンバーに近い立ち位置を取って、マーケットのニーズや観点に深く触れる経験を積むこともできます。
IT業界において、ジェネラリスト的な動きやハブ的な役割が求められるポジションはありますが、プレイドのカスタマーエンジニアは、自身の興味ややる気に応じていろいろな方向にバランスも深みも意識できる仕事だと思います。もちろん、カスタマーエンジニアとしてのプロフェッショナルになることも、ビジネス・エンジニアリングの専門職のキャリアパスもあると思います。カスタマーエンジニア組織のリードを務める池上とも話すんですが、いろいろな道を歩む自力を付けられる有意義な経験ができる役割でありたいと思っています。
実際に、いずれプレイドでプロダクト開発エンジニアになることを視野に入れて、カスタマーエンジニアとして入社してきたメンバーもいます。その人に限らず、Will / Can / Mustのバランスが良い人が多くて、かつ活躍していると思います。突発的かつ重要度の高い対応などで、本来やりたかったことができない状況や優先度の調整が発生することも多い中で、Mustを満たしつつ、Canを伸ばしながらWillも追えるといいですね。
僕自身が感じている価値だと、新しい機能を触って何が解決・改善できるんだろうと考えている時がめちゃくちゃ楽しいですね。実際の利用や問い合わせが発生する前に、「お客さんが言っていたこれが解消できるじゃん!」って思うとテンションが上がりますね。
KARTE Craftによって、さらにプレイドやKARTE、そしてカスタマーエンジニアが提供できる価値がめちゃくちゃ大きくなったとも思っています。KARTEの外にあるデータやシステムを組み合わせることで、KARTEをさらに拡張して使うことができるので、KARTEでできることがかなり広がりました。構想を聞いたときや実際に触ったときは感動しました。KARTEによってできることを増やすことは、会社全体の価値にも繋がるので、より効果的に活用を進められる状態をしっかり作っていきたいです。
もちろん、我々に求められる役割の難易度も相当上がります(笑)。自社プロダクトはもちろん、連携する先のシステムやデータへの理解が求められますし、より柔軟な発想も必要です。前に進み続けないと置いていかれる感覚があります。適度なプレッシャーとやりがいを感じながら、前に進めていると思います。
自分のスキルを上げながら、中長期的には組織と役割を全体に浸透させていく。
――最後に、道畑さんが考える個人としての目標と、組織としての目標を聞かせてもらえますか?
個人的には、まだまだ自分ができることを増やしていきたいです。元々ビジネス側のキャリアを歩んでいたこともあり、技術的に習得できる・すべきと感じる部分も多く感じています。組織を広く見ている立場であったり、いろいろな部分の仕組み化を進めていたりするので、自分のベーススキルを上げることで、もっと全体へ強くいい影響をもたらせると思っているので、日々勉強を続けていきたいです。
組織的には、これは勝手な考えかもしれませんが、中長期的にはカスタマーエンジニアの組織や明確な役割が溶けて無くなっても大丈夫な会社になることが理想だと思っています。今我々が果たしている役割を担える人が当たり前に各組織にいたり、会社全体で技術・プロダクトとビジネスの双方の知見のベースを上げたり、薄く広くたくさんの隠れカスタマーエンジニア要素が浸透しているようなイメージというか。そのためにも、まだまだ改善や進化の伸び代が大きい組織や役割なので、個々人のパワーアップも含む組織力の強化と、あらゆる観点での仕組み化をガンガンやっていこうと思います。