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SaaSにおける理想のアライアンスとはなにか?Slack、Qualtrics、Lookerとの連携の背景から考えた

KARTE」は、SaaSとして様々なプロダクトと連携しています。SaaSがアライアンスを進める上で必要なものとは一体どのようなものなのでしょうか。プレイドで事業開発からプロダクトマネジメント、アライアンス全般をリードしている宮原忍が、「SaaSにおける理想のアライアンスとはなにか」を書きました。

(プロフィール)宮原忍。2006年、日揮株式会社に新卒入社。エンジニア職として情報システムの企画・開発・プロジェクトマネジメントからグローバルIT戦略の策定と実行を担当。 2011年に株式会社リクルートへ転職。不動産・住宅領域プロダクトの企画・開発・運用部門の戦略立案から実行マネジメントならびに周辺領域における新規事業の立ち上げ・グロース、中長期経営計画に基づくR&D戦略の策定と実行を担当。 その後、2社での事業開発責任者を経て、2017年より株式会社プレイドに参画。CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」の事業開発からプロダクトマネジメント、アライアンス全般をリード。https://speakerdeck.com/miyashino

なぜ、積極的にアライアンスをするのか

これまでプレイドは、Google Marketing Platform、Salesforce、Adobe、Marketo、Lookerなど、グローバルプレイヤーを中心に様々なプロダクトとのアライアンスを行ってきました。現時点で既にリリースが予定されているものには、DataRobot、Qualtrics、Slackなども挙げられます。

プレイドが積極的にアライアンスを行っている背景には、自分たちの力だけでは限界がある、という考えがあります。プレイドのミッションである『データによって人の価値を最大化する』を実現するためには、クライアントに対して提供しなければならない機能は無数にあります。ですが、そのすべてを自社のリソースで開発することは現実的ではありません。

そのため、KARTEは初期から「プラガブル(接続性)」というプロダクト思想に基づいて開発されています。KARTEの特徴である「一人ひとりの顧客を知る、合わせる」を拡張するため、他社プロダクトの強みをプラグインで加えていける設計になっています。

クライアントのニーズや課題、システム環境に応じて、アプリケーションやデータの統合を柔軟かつ迅速に実現することで、KARTEをご利用になられているお客様が自社のエンドユーザーに対して最高のCX(顧客体験)を創出する環境の提供に取り組んでいます。

「良いプロダクト」と連携することで、KARTEはさらに進化し、クライアントに提供する価値が向上する。そう考えて、プレイドは積極的にアライアンスを行ってきました。

アライアンス先は、プレイドのミッションを実現する上で、必要なケイパビリティやアセットを有しているかを基準に選んでいます。具体的には、以下の3点が挙げられます。

1. 自分たちの目で確認したプロダクト力
2. 自社のプロダクトとの相性
3. グローバルも含めたクライアント導入数

プレイドでは、この3点の優先順位は「1 > 2 > 3」となっています。まず、プロダクト力についてどのように考えているかを共有します。(3はほとんどおまけなので、1と2についてお伝えします)

自分たちの目でプロダクト力を確認する

プレイドがアライアンス先を考える際、プロダクト力が高いかどうかが重要です。「良いプロダクト」とはなにかに関して、私は以下のように考えています。

・使いやすいにも関わらず、極めるととても奥が深い
・とにかくアップデートが早い、変化を恐れていない
・プラットフォーム性が高い

自分は最初のキャリアがエンジニアでした。プロダクトを使っていると、「これは絶対に作るのは難しいよな」と感じることがあります。技術的に難解であるにも関わらず、使いやすいプロダクトになっており、かつその難解さはユーザーから隠蔽されている。

大多数のユーザーにとって、プロダクト自体が技術的にすごいかはどうかは重要な関心事ではありません。使いやすいかどうかがすべて。とはいえ、使いやすさに寄りすぎて技術的なチャレンジをしないままでは、時間の経過とともにプロダクト力は減衰し、新しい価値を作ることなど到底無理です。そのバランスが高いレベルで成立していることが最も重要だと考えています。

また、「良いプロダクト」はとにかくアップデートが早い。アップデートが早いということは、現状維持を常に疑い、変化を恐れず常にチャレンジすることで、ユーザーに対して新しい価値の意義を問い続け、進化・発展し続けているということ。企業として高い理想や志を持ち、そこを目指して常に自分たちを変え続けている姿勢に、強い共感を覚えます。

あと、欠かせないのはプラットフォーム性です。「良いプロダクト」は、単一の業務に対して機能性を提供するのみでなく、他のサービスやプロダクトとの連携や標準化されたナレッジといった機能性以外の付加価値を提供することを前提に設計されており、そのプラットフォーム性がプロダクトの魅力の一つになっています。

具体的な例を挙げると、アンケート作成・分析における世界有数のリサーチツールである「Qualtrics」は、プラットフォーム性が高く、非常に「良いプロダクト」だと思います。Qualtricsはアンケートの作成、アンケート配信から集計・分析・そして改善アクションに至る一貫としたエンドツーエンドのエクスペリエンスマネジメント(体験管理)を可能にするだけでなく、業界独自の専門知識を標準化されたナレッジとしてプロダクトを介して流通させる仕組みができています。

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こうした要素を備えたプロダクトは、一人ひとりのユーザーの業務のみでなく、組織全体の業務プロセスを変えているはず。KARTEも『顧客目線を企業の共通言語に』といったプロダクトメッセージが示す通り、本質的な業務とは何かに対する気付きを与え、組織全体の思想や動きを変革しうるプロダクトを目指していますし、アライアンスを通じて連携したいのはこれらの要素を備えたプロダクトです。

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プロダクトの良し悪しを判断するためには、実際にそのプロダクトを利用した上で自分の目で確認する必要があります。プレイドには、ドッグフーディングの文化があり、他社プロダクトの利用に対して積極的に投資できる環境があることは、アライアンスにおいてもプラスに働いています。

自社のプロダクトとの相性を見極める

自分の目でプロダクト力を確認した後は、自社プロダクトであるKARTEとの相性を見極めます。プロダクトとの相性は、「KARTEの強みを拡張できるか」または「KARTEの利用ハードルを下げられるか」の2点で考えられます。

まず、重要なのは互いのプロダクトの強みを組み合わせることで、新たな価値が生まれるかどうか。KARTEは「リアルタイム」×「膨大なユーザーデータベース」が強み。この強みとの組み合わせを考えます。

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例えば、KARTEが蓄積したウェブサイトやスマホアプリ、またはオフラインでの来店・購買などを含めた膨大なユーザーデータをそのまま見ていては、なかなか顧客を理解することは難しい。次世代BI(Business Intelligence)プラットフォーム「Looker」とKARTEを連携することで、事前に構築済みの分析テンプレートを用いて、KARTEの膨大なユーザーデータをLookerの優れたダッシュボードで自在に描画することが可能になります。さらには、Lookerで描画された様々な分析データからKARTEのUIに戻り、個別のアクションを実行することも可能になります。

顧客の動向や変化を正しく知り、サービスの全体像を捉えることのできるダッシュボードは、企業のマーケティング活動に欠かせません。最近では、「n=1マーケティング」と呼ばれるような、顧客全体の中のひとりである「個」を深掘りすることの重要性も高まっています。

Lookerとの連携では、顧客の定量と定性、全体と個といったどちらのデータとも向き合い、行き来しながら正しい解釈とアクションのできる環境を、どんな役割や部署の人に対しても提供できると考えています。

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KARTEを利用する上でのハードルを可能な限り下げるための連携もあります。例えば、ビジネスチャットツール「Slack」のように日常業務で当然のように使っているプロダクトとKARTEが連携することで、KARTEからのお知らせや分析レポートがSlackを通じて共有・確認できるようになります。

Slackとの連携では、マーケティング業務におけるクローズドループ(PDCAサイクルを回し、改善施策を実施・検証すること)の運用を容易にし、またのKARTEがクライアントの業務プロセスの一部として溶けている状態をつくることができると考えています。

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その他、プロダクトとの相性は、その会社のミッションが自社のものに近いかどうかでも見極めることができます。もしかしたら当たり前のことかもしれませんが、ミッションが似ていると、不思議とプロダクトをつくる人たちの思想や文化が近くなります。特に「良いプロダクト」からは、その会社やプロダクトチームの想いが強烈に伝わってくるんですよね。

例えばLookerは、会社のミッション『より優れたインサイトとデータドリブンな意思決定をあらゆるビジネスにもたらす』もプレイドと似ていて、アライアンスの話を進める過程で思想や文化が近いなと感じると、一緒にやっていきたいなと思える。ある意味、採用活動のようなもので、自分が働きたい仲間を探し、集めている感覚なのかもしれません。

「良いプロダクト」は、良い会社かつ良いプロダクトチームじゃないと作れません。先述のプロダクト力が高い場合は、奥深いところでは技術的に非常に難しいことをやっているはずなのに、それをラッピングしてユーザーから隠蔽することで、使いやすさという価値を提供している。

それは、エンジニアの力だけではなく、ビジネスサイドの力もないとできないはずなんですよね。ビジネスとエンジニアが一緒に解決できる、組織の力があってはじめて「良いプロダクト」が提供できる。実際にアライアンスを進めていく上で、組織の強さを感じられるかどうかも大切なポイントです。

なぜ、KARTEはグローバルなプロダクトとアライアンスできるのか?

KARTEが連携しているプロダクトには、グローバルで実績のあるプロダクトが多く含まれます。なぜ、こうしたプロダクトにKARTEが選んでもらえているのかについて、考えていることを共有します。

KARTEがグローバルで実績のあるプロダクトからアライアンス先として選んでもらえている理由は、3つあると考えています。

1. シンプルにプロダクト力がある
2. スタートアップだからこそ、意思決定が早い
3. 日本国内での実績(クライアント導入数)

ひとつは、KARTEには他のプロダクトにはないコアな強みがあること。誰も弱いプロダクトと連携したいとは思わないので、これは非常に重要な要素です。

KARTEの強みは、独自の高度なリアルタイム解析技術により、計測から接客まで1秒以内で実現可能とのことに加えて、KARTEを使えば使うほどユーザーデータが蓄積し、ユーザーの解像度が高まっていくという点。例えば、KARTEで計測したユーザーの行動ログに対してセグメントを作成すること自体そうですし、KARTEで作成した接客をユーザーに届けるだけでも、新たな行動ログ(接客に対する反応)が生成されます。

また、KARTEのオプションサービス「KARTE Datahub」を利用することで、オンライン・オフラインに限らず、社内の基幹システムや、様々な外部サービス/プロダクトに存在する多種大量なデータが集まります。こうした強みは、他のプロダクトにはあまり見られないものであり、アライアンス先として選んでもらえている理由になっていると思います。

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KARTEの導入クライアントから「KARTEと連携してほしい」という声が、パートナーやプロダクトベンダーのもとに寄せられることもあり、それがきっかけでアライアンスの相談が始まることもあります。クライアント起点でのアライアンスが少なくないことも、KARTEのプロダクト力を証明することになるかと思います。

また、意思決定の早さも重要です。自分たちがアライアンスをしようとする際も、どこが意思決定しているのか見えない会社は避けています。プレイドでは、意思がある人が物事を進めていくべきだいう考えのもと、「ロジックがある」かつ「巻き込める人」に対して権限が移譲されています。

そのため、過去のアライアンスに関して、誰かの承認を取るといった社内調整をしたことがありません。仕事のための仕事が少なく、自分自身の判断で事業を前に進められる。結果、意思決定が可能な限り早くできます。その意思決定の速さも、KARTEがアライアンス先に選んでもらえている理由だと思います。

最後に、KARTEが日本国内で実績があること。日本法人を立ち上げたばかりのグローバルプレイヤーにとっては、まだ彼らがアクセスできていないクライアントとのつながりができることも連携するメリットと言えます。この点も、KARTEがアライアンス先として選ばれる要因になっていると考えられます。

シンプルに本質を追求するのがSaaSの勝ち筋

結論、KARTEのようなSaaS(Software as a Service)プロダクトのアライアンスにおいて、小手先のテクニックは必要ありません。SaaSプロダクトのビジネスモデルは、クライアントとの関係が非常にフェアです。

売り切り型のプロダクトとは違い、SaaSプロダクトは売った後の顧客満足度が重要です。もしクライアントがそのプロダクトに価値を感じ続けていただけなければ契約は継続せず、解約になってしまいます。アライアンスもそれと同じで、連携すること自体が目的になってしまってはいけない。クライアントにとって、本質的な価値を持続的に生み出していくことが重要だと考えています。

KARTEは、2015年3月の正式リリース時から機能比較のマルバツ表に載らないように意識してきました。そもそも比較対象になってしまっている時点で、他にはないコアな強みがないということ。KARTEでしか出せない価値があり、それを相手に理解してもらわないとアライアンスを行うことは困難です。

先日開催された『プロダクトマネージャーカンファレンス 2019』において、「INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント」の著者であるMarty Caganさんは、「優れた企業はなぜ優れたプロダクトチームを作るのか?」について語っていました。優れた企業になり、優れたプロダクトチームを作り、優れたプロダクトを作る。そうすれば、自然とアライアンスも可能になると考えています。

今後、プレイドの戦い方はよりシンプルになります。「良いプロダクト」を作り続け、「良い会社」であり続ける。他の「良いプロダクト」と連携し、新しい価値を生み出していく。逆に、良い会社でなければ、「良いプロダクト」を作れないですし、アライアンスもできません。

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グローバルなプロダクトとの連携を含めて、プレイドが何を目指していくのかは、こちらのnoteにて代表がじっくり語っています!プレイドやKARTEの未来に関心を持った方は、ぜひチェックしてみてください。

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