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アパレルにおける良い顧客体験とは?業界全体のCXの底上げを目指すアプローチ

KARTEが新しく提供を開始した、アパレル業界向けのパッケージや、レコメンド機能はどのような背景から生まれたのか。プロジェクトをリードした田中 悠にプロジェクトの裏側を聞きました。

田中 悠:
新卒でキヤノン株式会社に入社。一眼レフカメラのグローバルマーケティングを経験後、2015年10月よりプレイドに参画。プレイドでは、アパレル業界を中心としたECサイトの運用をプランニングから技術的な実装まで幅広く支援、その他外部パートナーとのアライアンスや事業開発など様々なプロジェクトに従事。動画編集が趣味で、社内動画をいくつか制作。自称ムービークリエイター。

業界の課題を考え抜いて解決する

ーーアパレル業界に向けたKARTEのパッケージとはどのようなものなのでしょうか。

2018年夏に、アパレル業界向けにKARTEのパッケージを作ろうと動きはじめました。クライアントごとにリテラシーや社内のリソースにも違いがあり、すべてのクライアントにKARTEを使いこなしてもらうのが難しい状態でした。

KARTEはできることの幅が広いプロダクトです。クライアントにKARTEを使いこなしてもらうためには、パッケージが必要だと考えていました。パッケージでは、KARTEの活用のシーンを可能なかぎり具体化。シナリオ、テンプレート、運用のノウハウ、レポーティングなど、KARTEで可能なことをアパレル業界に特化してまとめました。

ーー業界を絞った理由はどうしてだったのでしょうか?

元々、KARTEにはストア機能があり、様々なシナリオが用意されています。KARTEでは、ストア機能にあるシナリオを使うとすぐに施策ができるのですが、すべての業界が対象になっていました。慣れていない方にとっては、どれが自分たちにとって必要なシナリオなのかはわかりません。

業界を絞ることで、より具体的な課題設定が可能になります。様々な業界の課題を解決するためのパッケージを作ることは困難ですが、業界を絞れば一定の汎用性を残した上で具体的な課題を解決するパッケージにできます。私たち自身がKARTEの機能の中から、どのようなものがアパレル業界において効果が出るのかを考え抜き、クライアントが本当に必要とするものを作る狙いもありました。

もちろん、アパレル業界といっても会社によってニーズは異なることもあります。そこを各クライアントのニーズに個別で応えるまでカスタマイズしてしまうと、今度は汎用性がなくなってしまう。

全体でも、個別でもなく、業界にフォーカスして、同じ業界の人たちが使えるパッケージをつくる。そうすることで、同じ業界の人たちが一定の領域までKARTEを利用できるようになります。いちから自分で考えることは難しいですが、パッケージによってアウトラインが用意されていれば、クライアント自身が自らカスタマイズし、設計できます。

業界を絞ることで、汎用性を残しながらも、各クライアントが自身のやりたいことを発見して自分たちでカスタマイズするための土台を作ることができるんです。

ーー業界の中でも、最初にアパレルにフォーカスした理由は?

自分がもともとアパレル業界をメインで担当していたこともありますが、KARTEのクライアントはアパレル業界のシェアが一番多いことも理由としてあります。そのため、数ある業種の中から、まずどこを救うかを考えてアパレルになりました。

また、アパレル業界は、新しい事例が登場したあとに広まりやすい傾向があります。導入を検討するクライアントの担当者も、エンドユーザーとしてオンラインやオフラインで服を購入しますから、事例を見れば利用のイメージもわきやすい。

自分たちだけで考えても、パッケージは成り立ちません。普段からお付き合いがあったこともあり、クライアントの声を聞きやすい立ち位置にいたので、パッケージを作るにあたって直接クライアントと話しながらニーズを探っていきました。

「良い顧客体験ってこういうことか」が体感できるように

ーーパッケージを作る際に意識したことはありますか?

シナリオも含めてパッケージにすることで、クライアントに施策を「点」で考えるのではなく、サイト全体のユーザーの行動をもとに「線」で考えるようになってもらいたいと考えていました。

例えば、実際のエンドユーザーの購買行動は、サイトを来訪して悩んで、悩んだあとお気に入りに入れて、一度離脱し、再訪して購入する、というようなストーリーがあります。さらにストーリーもワンパターンではなく、エンドユーザーの目的やタイプによって変わってくる。

こうしたエンドユーザーのストーリーをしっかり考えた上でシナリオを考え、施策を配信するというのをパッケージでは提供したいと思っていました。加えて、施策の振り返りや効果測定も長期的な目線で設定してもらえるよう、視野を広げてもらおうとも考えていました。

ーー単に使い方をイメージしてもらうだけでなく、顧客との向き合い方に対しても考える機会にしてもらおうと考えていたんですね。

そうですね。私たちが設計したパッケージで、実際にクライアントにシナリオを体験してもらう。そうすると、「顧客体験を上げるための方法の一つにこんなやり方があるんだな」とイメージしやすくなると思います。未経験の状態で、ゼロから良い体験を生むのは難しい。だからこそ、まずクライアント自身にKARTEでできることを体験してもらう必要がありました。

クライアント自身が体験できると、施策の効果を振り返る際も、一つひとつの施策を点で評価するのではなく、ファン層の増加やアクティブ率の向上といった効果に目を向け、線での評価がイメージしやすくなります。パッケージでは、設計から振り返りまでをセットにした運用モデルを提供することで、一時的な体験だけでなく継続した体験を感じる仕組みを作っています。

パッケージに欠かせなかったレコメンド機能の開発

ーーパッケージづくりと並行して、KARTEのレコメンド機能の開発も行ったんですよね。

はい。パッケージを作ると決めた時点で、必然的にレコメンド機能が必要だと考えていました。KARTEのレコメンド機能は、ユーザー毎の属性・行動といった顧客データに加えて、その人の状況やオフラインデータなどを相互に関連付けることで、精度高くパーソナライズされたレコメンドができるというものです。

具体的には、ウェブサイト、アプリ、オフラインにおけるデータを「一人のユーザー」に統合してレコメンドを行います。KARTEによって収集・解析したデータだけでなく、社内の基幹システムや様々な外部サービス・プロダクトに存在する顧客データもKARTEに統合することで、精度の高いパーソナライズを実現する機能です。

ーーパッケージとレコメンド機能はどう関係してくるのでしょうか。

KARTEには「KARTE Datahub」という様々なデータを集約できる機能があります。多くの方にとって、KARTE Datahubは単にデータを貯められるという理解にとどまってしまいます。かなり便利な機能なのですが、なかなか使い方が伝わらない。蓄積したデータをどう活用するのかをイメージにしてもらうために、パッケージは有用だと考えたんです。

KARTE Datahubとレコメンド機能を組み合わせると施策の幅が広がります。例えば、閲覧と購買以外にもエンドユーザーのページ内の行動もイベント化できます。「商品ページで80%スクロールしました」「90秒以上滞在しました」「画像をスワイプしました」などの細かいロジックもイベント化でき、レコメンドのロジックに入れられるんです。

しかも、「KARTE Talk」という機能と組み合わせると、ポップアップやメール、プッシュ通知、LINE、SMSなど、様々なチャネルでレコメンドの発信ができます。KARTEには、顧客を「知る」と顧客に「合わせる」の2つの軸があり、レコメンド機能があることによってこの2つが大きく強化されます。

KARTEの可能性を伝えようとするパッケージを活かすためにも、レコメンド機能は必須でしたね。

ーー普段から新しい機能の開発についても考えているんですか?

新しい機能は常に作っていきたいと思っています。コミュニケーションを通してクライアントのニーズが発見されたら、それをプロダクトに反映したい。一貫してプロダクト開発まで関われる自由度の高さがプレイドの面白さですね。

とはいえ、なんでもできるわけではありません。機能開発などは社内でメンバーを巻き込む必要があり、そのためにはクライアントにどういう価値を提供したいか、事業がどうしたら成長していけるかを考え抜き、熱量を持ってメンバーに伝えなければいけない。

プレイドはfocusといって2、3ヶ月でチームが変わり、集中して取り組むテーマが変わる働き方です。そうすると、プロジェクトが続くためにはリードする人間の熱量が欠かせません。自らが熱量を持って取り組み続けるためにも、考え抜くのは大事ですね。

「感性」のレコメンドも目指して

ーーアパレルパッケージは今後どうなっていくのでしょう?

アパレルパッケージは、導入企業数は多くないですが、想像以上に良い反応をいただいていて、KARTEの価値を理解していただく効果があると思います。パッケージを体験できるデモサイトもあり、KARTEで出来ることを知ってもらいやすくなったことに加えて、セールスもしやすくなりました。

業界が変わるとパッケージする内容も変わってくるので、今後は他の業界のパッケージも作っていきたいと思っています。あとは、パッケージをもっとオフラインを絡めた形に持っていきたいと思っています。

ーーオフラインも絡めた形とは?

現在、提供しているパッケージはオンラインにとどめています。KARTE Datahubを使えば、Webの行動だけではなくて、オフラインの購買データも取り込めます。そうすると、オフラインも含めて、線で施策を作れるよう、パッケージにしていきたいですね。

アプリにもKARTEは入れられるので、店舗体験をいかに最大化できるかに取り組んでいきたいと思います。例えば、アパレル業界であれば、リアル店舗で購買した翌日に実際に接客してくれたスタッフから商品に関連するコーディネートがメールで届くようにしたり。

パッケージを利用してもらえれば、オフラインも含めてきっと新しいニーズが出てくると思います。要望が出てきたらまたそれをパッケージングして、KARTEの活用を促進。パッケージを提供することでセールスをしやすくして、事業自体も伸ばしていけたらと思います。

ーーその他、取り組んでみたいことはありますか?

感性のレコメンドは挑戦したいですね。顧客の生の声をとって、回答によってエンドユーザーをタイプ分けして、タイプによってレコメンド内容を変える。エンドユーザーの感性によって、レコメンドしていけるようになったら面白いなって。

スタッフの方にもどういうファッションの提案が得意かをアンケートをとり、エンドユーザーにもどういうファッションが好きかをアンケートをとる。スタッフとエンドユーザーを感性によってマッチングするようなレコメンドもやっていきたいですね。