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私が日本オラクルの執行役員を辞めてプレイドに飛び込んだ理由と見据える勝ち筋

2022年11月にジョインした桑野祐一郎が、2023年2月に執行役員/VP of Sales and Originationに就任しました。クラウド型財務管理ソリューションの米キリバや認証プラットフォームの米Auth0のカントリーマネージャー、日本オラクルのCXクラウド事業本部の責任者などを歴任してきた彼は、顧客企業(KARTE Friends)との価値共創の機会を最大化し、Friendsとプレイドの事業成長をリードするという重要な役割を担います。

キャリアの大半を外資系テックカンパニーの事業拡大および経営において作り上げてきた桑野は、実に「新卒で入った会社以来」に日系企業を、しかもスタートアップを新しい挑戦の場として選びました。彼はなぜプレイドを選び、その勝ち筋をどう考えているのか。話を聞きました。

外資で受けた、雷に打たれたような衝撃

――桑野さんのこれまでの経歴を教えてください。

新卒で日系SIerに入社し、数年でCADなどのソフトウェアベンダーである米PTCの日本法人に転職しました。

日系SIerでは営業でした。要領よく成果を上げていたものの、日本の伝統企業にありがちな「営業は勘と経験と度胸」というスタンスや年功序列の風土に辟易としていました。転職を決意し、「どうせなら全く逆の環境で自分の力を試そう」と、当時最も営業に厳しい会社として知られたPTCに入りました。

PTCでの経験が、その後の私に決定的な影響を与えています。そこでは営業が徹底的に科学されていました。「MEDDIC」という方法論を学び、雷に打たれたような衝撃を受けたんですね。営業活動が論理的かつ体系的に紐解かれ、方法論を実践すれば結果もついてくることを身を持って知り、感動しました。それまでは営業は好きでもなかったのですが、その頭脳ゲームとしての側面に魅せられ、「おもしろい!」と感じてしまったのが人生の転機ですね。

そこから、外資スタートアップの日本法人立ち上げやセールスフォース・ジャパンを経て、キリバ・ジャパン、Auth0でカントリーマネージャーに就任。その後、日本マイクロソフトでマーケティングオペレーションとしてCOOに相当する役割を担い、日本オラクルではCXクラウド事業本部責任者を務めました。

株式会社プレイド 執行役員/VP of Sales and Origination 桑野祐一郎

――外資スタートアップの日本法人立ち上げや日本での事業リードが、桑野さんのキャリアの特徴のように思えます。このような仕事のどこに魅力を感じていたのでしょうか?

一定のリソースを本社から与えられたうえで、全部ゼロからつくりあげられるところが魅力ですね。誰かからの指示で「これだけをやっていればいい」という状態になるのは性に合わない。自分の力で仕掛けてモメンタムを作り出し、達成感を得ることにおもしろみを感じるタイプなんでしょうね。

予め魅力に感じていたのではなく、カントリーマネージャーに就任する過程で大事だなと気づいたこともあります。当時、キリバのカントリーマネージャー候補が自分含めて何人かいるなかで、エグゼクティブサーチの企業からインタビューを受けることに。

そこで「桑野さんは器用ですよね。どこの会社でもトップセールスになっている。しかしどこも長続きせずに辞めている。今あなたはカントリーマネージャーを目指していますが、一つの会社で辞めずにいたら、もうカントリーマネージャーになれていたんじゃないでしょうか?」と聞かれ、ショックを受けてしまった。

確かに当時の私は、まわりと意見が合わなかったら別の場を探すのが常だった。その質問が自分を見直すきっかけになり、カントリーマネージャーに就任してからは人の意見に耳を傾けたり、対立があっても衝突するのではなく妥協できる点を探す努力したりすることに意識を向けられるようになりました。

カントリーマネージャーになったのがちょうど40歳のとき。キャリアの変遷をまとめると、20代はスキルを身につけ自分の力で稼ぐこと。30代は自分のチームのメンバーを稼がせること。そして40代は、組織や多くの人を動かすためにお金だけじゃなくて、例えばMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)をつくり浸透させていくことや、意思決定者としての求心力を体現していくことを重視していくようになりました。

――これまでのキャリアで、人生のハイライトになるような仕事があれば教えてください。

ある契約のために、本社を説得して新たに日本でデータセンターを設立したことですね。設立「させた」と言ってもいい。当時、日本にデータセンターを開設していたクラウドベンダーは1社もなかったはずです。

日本の大手IT企業との10億円規模の案件で、その会社にとっては初めてのクラウドサービス導入でした。契約間際でデータセンターが海外にあることがネックになり、社長の鶴の一声で内製化に舵が切られてしまったんですね。でもそこで諦めず、もう一度最初から商談を立ち上げ直しました。データセンターがないなら作ろうと自ら本社に掛け合い、無事契約となりました。

このディールでは本当に多くを学びましたね。データセンターがないからといって諦めてしまうのは言い訳にしかならないな、と。根本的に、他責思考で制約のせいにして責務から逃げるのがすごく嫌いなんですが、自分のポリシーを体現できた仕事でした。

――プレイドにジョインする直前は、日本オラクルに在籍していました。そのときの業務と、オラクルを離れようと思った経緯を教えてください。

日本オラクルでは4年ほど、CXクラウド事業本部で執行役員を務めていました。事業スコープはプレイドとほとんど同じです。データ統合を担うCDPを中心にしながら、マーケティング、セールス、カスタマーサポート、広告配信最適化といったプロダクトやアプリケーションをプレイド以上に有していると言っていいでしょう。

自分が責任者だったときは、特にカスタマーサポートの領域が強かったですね。ITを攻めと守りに分類すると、コスト削減や業務効率化に貢献するのが守りで、利益拡大に貢献するのが攻め。オラクルは出自として守りに強みがありますが、顧客企業の価値創造にコミットできるという意味で、私は攻めにあたるCXの責任者であることに誇りをもっていました。

では、なぜオラクルを辞めようと思ったのか。端的に言えば、日本の顧客企業の状況に合わせて価値提供するのが難しかったからです。150カ国で展開するグローバル企業からすれば、マーケットサイズは考慮されるとはいえ日本市場は150分の1の存在です。また、米国に比べて日本ではIT人材が事業会社よりもSIerなどベンダー側に多くいるので、企業は英語のプロダクトを導入してもなかなか使いこなせません。このようななかで、お客様のために本社へ機能改善やリソース投下の要望を挙げても通らないケースが多く、結果として日本の企業の期待に応えにくい実態がありました。ご契約いただいてもきちんと伴走支援できず、もどかしさをずっと感じていたんです。

だから、また別の外資系のスタートアップでチャレンジしようと考えました。実は、その会社でカントリーマネージャーとして内定もいただいていました。

プロダクトと人の掛け算がプレイドのユニークネス

――しかし、プレイドにジョインするという判断をされています。どのような経緯でプレイドに入社しようと決めたのでしょうか?

転職活動の終盤でたまたま紹介してもらったんです。「あれ、CXじゃん。自分めちゃくちゃやっていたぞ」と興味を持ちました。

オラクルを離れる決断をした後もCX領域自体は好きだし、市場としての可能性も感じていました。「でも、やりきれなかった」という感覚をもちながら、プレイドのメンバーと話したり、評判や事例を調べたりしていくと、顧客企業が幸せそうだなと思ったんです。

代表の倉橋と「プレイドの次の10年」を議論したことも記憶に残っています。これまでは社歴の長いメンバー同士の意思疎通を強みに、フラットな組織体制を維持しながら上場まで行けましたが、さらなる成長のためにはこれからの10年で変化を起こしていかなければならない、と。必要に応じて外部から新しい人材も積極的に登用し、組織構造も変革させていくという強い意志を感じました。

みなさんと話すなかで、これまでの自分の経験が存分に生かせると思いましたね。特に、セールスやカスタマーサクセスの「科学」の部分。自分が身につけた営業の方法論をほとんど実践せずにここまでの成長を成し遂げているわけだから、大きな伸びしろと可能性を感じました。ここであれば、日本企業のための価値提供に邁進できるなと、わくわくしましたね。

――プレイドであればCX領域で、日本の顧客企業を最優先としてご自身の力を発揮できると思われたわけですね。桑野さんから見て、プレイドの強みはどこにありますか?

「プロダクト」と「人」です。この掛け合わせが最大のユニークネス。「データによって人の価値を最大化する」というプレイドのミッションにも通じる特徴です。

まずはプロダクトとしてのKARTE。これはずっと外資系にいたから言えることですが、KARTEはグローバルで使われているプロダクトたちと比べても全く遜色ないです。ユーザーフレンドリーなUIや使い手視点での機能アップデートなどに行き届いた気配りが感じられ、日本発プロダクトの強みだと捉えています。

先ほど言及したように、営業の「科学」の部分が十分ではないのにここまで多くのお客様に活用いただいているのは、プロダクトの質の高さの証左といえるんじゃないでしょうか。

カスタマーデータのリアルタイム解析を中心に据え、あらゆる顧客接点でシームレスにデータ活用ができるというKARTEの設計思想は、これからの企業活動に必要な本質を捉えています。30年前までは電話しかなかったのが、その後Eメール、SMS、ソーシャルメディアと新たなタッチポイントがどんどん生まれてきたし、時代に合わせて既存の接点の役割も常に変化していく。

一方で、未来に顧客接点がどう広がっていくかを予測するのはなかなかに困難です。そこでKARTEは、顧客接点がどのような広がり方をしても対応できるように解像度高いデータ解析を実現し、KARTEだけでなく他のプロダクトでもそのカスタマーデータを活用できるように連携の柔軟性と機能の拡張性を高めています。

これからの競争優位性になるカスタマーデータをコアに、現在だけでなく未来志向でも活用できる環境を提供しようとしているわけです。手前味噌ですが、このコンセプトは圧倒的に正しい。

次に「人」。プロダクトカンパニーでありながら、事業開発組織「STUDIO ZERO」や体験設計と実装を担うプランニングチーム「CPU(CX Planning Unit)」などコンサルティング寄りの価値提供ができる体制が整っているのもプレイドの特徴です。

以前の私は「売って終わり」で十分に伴走支援できない歯がゆさを感じていたし、プロダクトを提供しただけでは企業の本質課題はなかなか解決できません。「プロダクト」×「人」でお客様の課題に向き合えるのは環境としても魅力的ですね。

企業にプロダクトをよりよく活用いただくためには、経営目標に紐づく指標設計や人材育成などが必要になってきます。プレイドにはこの領域でも価値提供を行おうという意志があります。これは顧客企業を支援する上で大きな強みです。

成功体験をアンラーニングし、企業の唯一無二のパートナーになる

――桑野さんは今後プレイドで、どのようなミッションを担うのでしょうか?

「科学」の浸透が目下のミッションですね。科学科学と言っていますが、営業は、その人の人間としての魅力など具体指標に還元しにくいArtの要素と、測定指標へ還元できるScienceの要素の掛け算で成立します。Artは属人化の領域で、つまり再現性がなく、スケールしにくい。組織としてArtに終始すると「売れる人は売れますが、売れない人は全く売れません」という状況に帰結します。

掛け算なので、Artをゼロにしろという話ではないんです。Scienceの値がゼロに近いのが問題。Artの要素でここまで来たわけだから、Scienceの側面を高めていければもっと伸ばせると確信しています。プレイドの行動指針に「アンラーニング」があります。まさに、今私たちに必要なのは過去の成功体験を一度捨てること。ArtとScienceの積が最大になるようにマインドや方法論、組織体制を洗練化させ、ビジネスを牽引していくつもりです。

私はセールス畑の人間ですが、SaaSビジネスにおいて「売る人」「カスタマーサクセスする人」「マーケティングする人」と縦割り化させていくのはナンセンスだと思っています。顧客企業の成長に貢献し、お客様にハッピーになってもらうために、フロントビジネス側を最適化し、オールプレイドで価値を創出できるようにリーダーシップを発揮していきたいですね。

でも、「何から何まで自分一人で変えてやる」とは全く考えていません。突然ですが、真珠ってアコヤ貝の体内に入った異物が刺激になり、その異物が貝殻成分で覆われてできるようです。自分が異物として、良い変化や新しい価値創出のトリガーになるような、そういう動きができたらなと思っています。

――中長期的には、何を見据えていますか?

「KARTEは誰を幸せにするプロダクトなのか?」という問いへの解答をアップデートしていかなければなりません。入って5ヶ月ほどでわかったのは、KARTEは現場の担当者様に受けが良い。お客様とのミーティングに出ると「使っていて楽しい」「やりたかった施策を柔軟に実現できる」とおっしゃってもらえることが多く、愛されているのが伝わります。

一方で、このまま現場の担当者様への価値提供にとどまってはいけないと強い危機感をもっています。ビジネスの世界では、「現場が幸せ」だけでは本質的な価値提供にならないという現実がある。目指すべきは「現場も幸せだし、経営層も幸せ」。会社として、KARTEで顧客企業のビジネスが改善していくことを証明し、意思決定層にその価値を伝えていく必要があります。そうでなければ、本当の意味で顧客企業の成長や変革にコミットはできませんから。

このような動きはビジネス側だけでなく、プロダクトづくりの観点で開発チーム側とも連動していきたいですね。プロダクトレベルで事業成果への貢献をもっと可視化できれば鬼に金棒です。プレイドの組織体制はビジネスとプロダクトの距離が近いので自然に連携できるはずだし、他の企業にはないスピードで実現できる手応えも得ています。これができれば、私たちは企業の経営戦略上の唯一無二のパートナーになれるはずです。

正直、今までのやり方をこれからも続けていたら、飛躍的な企業価値の向上は難しいと思います。でも、グローバルでも戦えるような強いプロダクトがあるし、良いメンバーが揃っているし、多くの顧客企業から評価をいただいている。リソースとファクトは揃っているわけだから、変化を恐れずに顧客戦略や提供価値を見直していけば、間違いなくまだまだやれます。そして私としては、その実績を武器にこの日本発のプロダクトを海外でも展開する準備を整えていきたいですね。

――「科学」の欠如という今のプレイドの課題への言及が何度かありました。他に、プレイドの伸びしろはどこにありますか?

良いメンバーが揃っていると言いましたが、本当に良い人ばかりです。でもそれは、素直と言い換えることもできてしまう。スマートな提案が多く、格好いい。でも、格好いいのに結果につながらないのであれば、それは格好悪いんじゃないでしょうか。

顧客企業のリクエストをすべて額面通りに受け止めるのではなく、その顧客も気づいていない角度からその人にとっての真の価値を検討し、ときには「ずるさ」をもって立ち回ることが必要です。「手段を選ばず」は格好悪いのですが、結果が出るのであればそれは格好いいのですよ。本当に顧客のためになるのであれば、そのお客様と喧嘩してでも思ったことは伝えるべきです。往々にして、その過程で顧客から信頼を得られるものです。

だから、科学と同時に「顧客の要望にすべて答えるだけが正義ではない」「顧客のためになるのであれば手段は選ばない」というタフさもインストールしていきたいですね。

――最後に、これからプレイドで挑戦してみたいという方へのメッセージをお願いします

最も重要なのは思いの強さです。プレイドのミッション、顧客企業や業界の変革、より良い顧客体験の提供、日本発SaaSの海外展開など、人それぞれプレイドへの期待や見方は異なりますが、どのポイントであってもいいのでそこに強く共感してくれる方と一緒に働きたいです。

経験の有無は関係ありません。方法は教えられるので、それよりもチャレンジしたいという意志がある方を求めています。私もキャリアのなかで、悶々としていた日常が一瞬で変わる経験をしました。強い思いがあれば、ブレークスルーは一瞬で起きるものです。

特に、顧客企業の成長に真剣に貢献したい、成功にコミットしたいと考えている方を歓迎します。意志と行動力をもってくれていれば、例えばビジネス上の攻め方の判断などは私の経験が力になれるはずです。一人の力で大きなインパクトを出すのは難しいので、社内外のステークホルダーを巻き込めるリーダーシップを発揮できるとなお良いですね。プレイドには、このような動きを良しとする体制とカルチャーがあります。

今のプレイドは変わらなければいけないフェーズにあり、変わるための試行錯誤に全社でトライしています。変わりたいという意志をもつ方にとって、これ以上ないチャレンジングな環境を提供できるはずです。大きな変化が起こる渦のなかで、一緒に楽しんで泳ぎ切れるような方と出会えることを願っています。