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歴史と規模を抱え、エッジの立った開発を。KARTE Webチームの面白み

プレイドの提供する「KARTE」は、Webサイトやアプリ上での顧客体験を向上させるためのプロダクトです。訪問者の行動データをリアルタイムで収集・分析し、それに基づいてパーソナライズされたコンテンツやメッセージを提供することで、顧客とのコミュニケーションを最適化します。

今回は、KARTEのWebサイト向け機能の開発を担うプロダクトマネージャー兼エンジニアの川島唯人、開発リーダー兼エンジニアの渡邊信吾、プロダクトデザイナーの石垣純一に、開発チームの体制や担う役割、仕事の進め方や考え方、プロダクトに感じる面白さや可能性などについて話を聞きました。

各メンバーのこれまでの経歴

――みなさんの自己紹介やこれまでの経歴をお話しください。

川島:川島唯人です。プレイドには2021年の12月に入社し、プロダクトマネジメントと開発のどちらも担っています。エンジニアとしてはフロントエンドの領域が得意で、フロントエンド関連のアーキテクチャ設計やテックリードを務めることが多いです。

これまでのキャリアとしては、受託開発・SESの事業を主とする制作会社や人材系のサービスなどを提供する企業で働き、Webサイト開発や新規事業立ち上げなどに携わってきました。プレイドに入る前の選択肢はさまざまあったのですが、私自身「プレイヤーであり続けたい」という想いが強いため、役割や組織がフラットに感じられたプレイドに魅力を感じました。あとは、以前KARTEを利用していた経験があり、プロダクトの良さと課題の両方を感じていて、自分の手で改善したかったのも転職の決め手でしたね。

川島 唯人(Product Manager & Engineer)

石垣:デザイナーの石垣純一です。前職では大手メーカーのデザイン部門に所属して、産業IoTや医療系ITプロダクトなどのデザインをしていました。

前職でも主にデジタルプロダクトに携わっていましたが、事業と開発により近い環境での活動を模索している中、プレイドでデザイナーをしている大学の同窓生からの話をきっかけに、キャリアの選択肢として意識するようになりました。共有されたデザイナーやエンジニアたちの記事を読む中で、エンジニアの強さや、まだ世に顕在化していない可能性に挑戦するプロダクトアウトの姿勢に強く共感しました。

また、KARTEが複雑性の高いプロダクトであることも、魅力的なポイントでした。その複雑性をうまく解きほぐして、世の中により浸透させたいと思い、2022年8月にプレイドへと入社しました。

石垣 純一(Product Designer)

渡邊:エンジニアの渡邊信吾です。入社は2021年4月で、それ以降KARTEのなかで昔から存在するコア機能を軸として、バックエンドやフロントエンド、データ分析などを担当してきました。

2023年11月に発足したKARTE Webチームでは、開発リーダーの役割も担っていて、開発もしつつ、開発者がプロダクトを継続的に開発や改善ができる環境を担保するみたいなところも担当しています。

キャリアの1社目は不動産テックの会社に新卒入社し、研究開発をする部署に所属して機械学習や数理最適化などを活用した開発を3年ほど行っていました。ただ、使われるかどうかわからない実験的な機能を作ることも多くて。実際にユーザーに使ってもらえて、かつ大規模なデータを扱えるプロダクトの開発に携わりたいと思うようになっていきました。

それから、私は人間の行動のように捉え難いものを、データを使って可視化・分析することに面白みを感じるタイプで、プレイドのミッションやプロダクト思想にも共感して、転職を決めました。

渡邊 信吾(Engineer)

KARTE Webチームの役割とは

――KARTE Webチームとはどのようなチームなのでしょうか?

川島:前提として、プレイドではKARTE○○という名前のさまざまなプロダクトを展開する、いわゆるマルチプロダクト戦略を採っています。それらのプロダクトは、弊社の強みである「リアルタイムに膨大なデータを解析する独自の解析エンジン」をシステムのコアにしています。

KARTE Webチームはそれらのプロダクトのなかでも、「クライアントのWebサイト上でそのサイトのユーザーのデータを解釈してセグメンテーションし、個々のユーザーに合わせたWeb上のアクションを提供する。その分析を行い、分析結果を多様な施策実行に活かす」という根幹の機能開発の役割を担っています。

KARTEの強みとしては、オールインワンであることが挙げられます。部分だけで見ると、ある機能に特化した他社プロダクトより劣る部分もあるかもしれません。ただ、KARTEではユーザーのデータを収集したうえでその人に合ったアクションを行い、その結果を蓄積して次のアクションにつなげるという循環を作ることができます。オールインワンという特性を活かして、点と点をつなげて線になることと、そこから価値を創出していけることが差別化要素だと思います。

石垣:ユーザー視点で見ると選択できる手段やできることの幅が広く、カスタマイズをして「自分たちだけのKARTE」として使うことができます。開発・提供する我々にとっても、特定のニーズがある人に向けた機能として、より特化したソリッドな機能を作っていくこともできる。

KARTEにはプラガブルという設計思想があり、CTOの牧野がプロダクト開発における思想を語っている記事もあるので、ぜひ読んでほしいです。

このあたりは、特定のプラグインをインストールすると該当の機能が有効になるという制御方法を取っています。まだまだ全体に公開できるものではないけど、ニーズが高そうな企業にプラグインを開放して使ってみてもらい、フィードバックを貰ってチューニングをしていくといった動きもスピード感を持って行うことが可能です。

また、KARTEでは特定のユーザーの行動を詳しく見ることができるのですが、ユーザーの各種イベントを取得する最小単位がかなり小さいので、他ではできない細かい粒度でセグメントの条件をつくり、アクションに利用することもできます。

渡邊:ユーザーの行動が詳細に見えることで、アイデアが刺激されますよね。プレイドは「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げていますが、まさにミッション通りのことをKARTEでは実現できます。

また、自由度を違った切り口でも話すと、実は開発をしている我々にとっても有益なんです。私たちが問い合わせを受けて何かの調査をする際に、KARTEユーザーがKARTEの管理画面上でどんな行動・操作をしていたのかを、管理画面の中に組み込んだKARTEを介して見ることができ、理解や改善に活かすことがあります。こういった活用の自由度も面白いと思いますし、ユーザーや問題の解像度を上げて解決に向かえるのはありがたいプロダクトだと実感することも多いです。

――実はKARTE Webチームは比較的最近組成されたと聞きました。

石垣:はい、KARTE Webチームは2023年11月に結成され、チームとしての歴史は半年くらいなんです。

チームが発足する前は、分析・可視化機能を担うチームと施策の実装機能を担うチームが、別々に存在していました。各チームがそれぞれの領域に専念して、成果をソリッドに出せていると思っていたんです。

川島:しかし、数年前くらいからその体制の課題を感じるようになりました。分析をした結果をアクションに活用したいとか、アクションの結果を分析したいといったように、お互いがお互いの領域を良くするために、他方の仕様や機能も含めて改善を考えたいというケースが発生してきたんです。

検討を進める中で「特定のチームが分析とアクションのどちらも管轄したほうが、プロダクトとして総合的に良いものが作れるのではないか」という仮説に至り、KARTE Webチームが発足しました。

――チームが発足してから、具体的にどのような点が改善していますか?

川島:当たり前かもしれませんが、以前は自分たちの担当ではない機能側に関わるアイデアについて思考にストップがかかる瞬間があったんですよね。現在はあらゆる機能をロードマップ検討のテーブルにあげられることはもちろん、複数の機能を横断した体験を追求することも可能になって、活動の幅が何段階も広がりました。逆に、やれることの幅が広いが故の難しさはあると思います。

石垣:KARTEを利用して事業を伸ばすためには分析と、施策実装・配信のどちらも重要です。その両方にアプローチできる体制になれたのはシンプルに良いと感じています。

多くのユーザーにとってKARTEを利用するうえでの第一歩は施策を実施するところで、「施策を実施→成果を振り返りたい→分析する」または「施策を実施したい→どんな人に届けるべきか知りたい→分析する」という順序だと思うんです。

だからこそ、私たちのチームが両方を考えてプロダクト開発をすることでユーザー体験も改善すると思いますし、その点を踏まえて「こういうカスタマージャーニーが理想的だから、ロードマップに落としたらこうじゃない?」という話をチーム内でできるようになったのは、嬉しいポイントですね。

渡邊:私が入社した頃にあった分析機能のチームは、エンジニアとデザイナーはいたものの、プロダクトマネージャーやビジネスサイド出身のメンバーがいませんでした。

現在の体制ではチーム内にプロダクトマネージャーもいますし、チーム全体のリーダーはカスタマーサクセス出身で、開発チームのメンバーがあまり知ることのなかったユーザーのニーズや各種の数値などを聞く機会が増えています。それらの情報を踏まえて開発の指針を考えられるようになったことは、私個人として利点を感じるところです。

開発の流れ・タスクの優先度決め

――どのように開発を進めていますか?

川島:基本的な流れとしては、1つのエピックにつき担当のオーナーが1人アサインされます。このオーナーを中心としてスモールチームを作りエピックのゴールに向かって開発を進めていきます。

特徴としては、要件定義のフェーズからエンジニアやデザイナー、プロダクトマーケティングのメンバーなどがディスカッションに参加することです。プレイドは個人の裁量が大きくメンバーのクリエイティビティを最大限発揮することを重視している会社なので、オーナーが要件を作り込んでから後続の工程に進めるのではなく、良い意味での余白を残した進め方をすることが多いです。

これによって外してはいけない部分を守りつつも、広い視野でメンバーが検討でき、短期的な目線のみでなく中長期的な保守性・拡張性を考慮したプロダクト開発ができると思っています。

――たとえば、メンバーの考えや想いが衝突した場合はどうしていますか?

川島:まだチームができたばかりということもあり、どうやって進めるのが正解かは手探りという状態です。とはいえ、もちろん判断の基準としているものはあります。チームとしての最重要指標を定めたうえで、「この指標を達成するためにどのような中間指標が必要か」を基準にしています。これらの指標の洗い出しは、チームを発足してから最初に実施しました。

これは定量的な判断基準ですが、その逆に「解約率を下げるためにはこうなっているのが理想的だよね」という定性的な面から考えてロードマップを策定するという方法も用いています。

誰か特定の個人が調査して意思決定するのではなく、調査段階からコアメンバー全員で取り組んで、結果をまとめてエピックの案を出すところも必ず自分たちが関与しています。そのうえで、各種のデータや判断軸をもとに「これをやると効果があるはず」と考えるので、チーム内での認識のズレはそれほどありません。だからこそ、絞り込まれたエピックは開発に携わるメンバーたちのなかで納得感のあるものにできています。

石垣:KARTEはコアのプロダクトであり、利用者も多いからこそ、他のチームから「これをやってほしい」と言われがちな部分もあります。他のチームからかなりいろいろな意見が飛んでくるのは間違いないです。

全てに対応はできないので、チームのフォーカスを表明した開発ロードマップをしっかり作り、各種ステークホルダーに「ここはやるけれど、ここはやらないですよ」としっかり情報共有しています。今後もより一層コミュニケーションをとりながら、上手く期待に応えていきたいです。

KARTEを次のフェーズへ

――KARTE Webチームの今後のビジョンを教えてください。

川島:最近、「ユーザー構成比」という機能をリリースしました。この機能は、「ダッシュボード上でユーザーの構成比を可視化できる」ということをメリットとして提示していますが、私たちはこれを「ユーザーを“群”で理解するためのコアデータ」として考えています。これまではユーザー単体の特性や行動履歴を深く見ることは可能だった一方で、その逆にユーザーを群として深く理解することが苦手なプロダクトでした。しかし、ユーザー構成比の機能が出たことで、その側面を補完できると考えています。

“群”というと、以前よりKARTEには条件に一致するユーザーにタグ付けができるようなセグメント機能がありましたが、ユーザー構成比機能のリリースに伴い、KARTE上で所有している膨大なデータをもとにした多くの統計情報をユーザー単位で保持することが可能になりました。これによって、ある条件に一致するユーザーは何人か?というボリュームを示すデータだけでなく、ある条件に一致するユーザーが「どのカテゴリの商品を購入している傾向があるか」「どの流入経路から来訪している傾向があるか」「購入回数の分布はどうなっているか」など”群”の特性を多面的に理解することが可能になります。

このようにN1ではなく群として理解することで「事業により大きなインパクトを与えるには誰に何をするべきか?」という優先度付けがより本質的に可能となり、KARTEを使って行う活動の質とKARTEが持つデータの価値は飛躍的に上昇すると考えています。

今後は、新機能はもちろん既存機能にも”群”のデータを組み込み、プロダクト全体の価値をアップデートさせていくことで、ユーザーがアクションと分析のサイクルをより良く回していける状態を作りたいと思っています。分析からアクションまで幅広いスコープを管轄するチームだからこそ、プロダクトの単独の機能だけを考えるのではなく、プロダクトを包括的に捉えてユーザーに価値を提供しようという連動性を考えられるようになったのは大きな意義があります。

――KARTE Webチームの開発の面白さはどのような点にあるでしょうか?

渡邊:KARTE Webチームが扱っている領域は、プレイドの持つシステムのなかでも最も昔からある部分です。そこには、過去の膨大な資産があり、いろいろな人が開発してきた積み重ねが感じられるんですね。大規模で、かつ絶対に壊してはならない箇所の整合性を保ちつつ開発を進めていくのが楽しいです。

それから、大量のデータを持っていることはエンジニアリングの面白さにつながっていると思っています。データの量が大きくなければ、アーキテクチャや設計に少しまずい点があっても問題なく動くこともあると思うんですが、データ量が膨大だとそうした点を考慮しないとすぐに破綻するんですよね。それをいかに工夫するか、スキルが問われます。

川島:KARTEは、いろいろな立場で多くの人が関与しているため、社内外含めて多くの人が「今の仕様が当たり前」と考えていることが多いように感じます。でも本当ならば、実際に広く使われている機能だからこそ、より改善できないかを常に考えるべきだし、改善された場合のインパクトも大きいです。そして、KARTEはKARTEシリーズそのもののコアであるため、KARTEが進化することは、全体に大きなプラスの効果をもたらすと考えています。

現在は、既存の重要な機能を次々とリビルドさせていくフェーズです。全く何もない状態から新たなプロダクトを生み出すことももちろん楽しいですが、規模が大きくなっているシステムの課題と向き合い、改善していくのは固有の楽しさがあります。

KARTEには行動データだけではなく、ありとあらゆる種類のユーザーのデータが蓄積されています。だからこそ今後は現在の主要ユーザーであるマーケターの皆さんだけではなく、エンジニアやプロダクトマネージャー、CS、営業などさまざまな職種の人々にとって役立つプロダクトへと進化させられると、さらに開発も楽しくなっていくだろうと思いますね。職種や部署の垣根を超えた、事業のインフラのような存在になり得るポテンシャルを持っているプロダクトだと思っています。

石垣:デザイナー目線だと、「自分が作ったものがどう使われているのかを知りたい」という気持ちは、必ずあると思っていて。その時、一般的には、ユーザーインタビューするとか、各種データを定量的に確認する方法があると思いますがKARTEはどちらのアプローチも可能です。

粒度の細かい利用データがあるからこそ「ボタンクリックレベルでどう使われているのか」がわかる。さらに、そのレベルで情報を把握したうえでユーザーインタビューすると「このときはこういう理由でこのボタンを押した」という答え合わせを、解像度高くできるというのが、嬉しいところですね。

渡邊:KARTE WebとしてもKARTEシリーズ全体という観点でも、蓄積しているデータを用いてまだまだ価値を発揮しきれていない部分もあるので。プロダクトの歴史は長いけれど、やれることがたくさんあるという奥深さがありますね。

――逆に、開発の難しさはどのような点にあると思いますか?

川島:既存の機能のどこまでが作り替えていい範囲で、どこまでが壊してはならない範囲かの見極めが難しいです。機能が豊富なKARTEだからこそコードレベルはもちろんですが、運用面で思いも寄らない影響を与えてしまうということもあります。この変更がどこまで影響を与えるか。という点は常にシビアに考えています。

それから、先ほど「ユーザーにとって当たり前になっている」という話がありましたが、だからこそ何が課題かを明確にするのも難しいです。社内外含めてヒアリングの場を設けることもよくありますが、当たり前になっていることを前提に考えた意見になってしまいがちです。各職種の人々が、リビルドする難しさを実感しながら試行錯誤しているという気がします。

――KARTE Webチームの開発に携わることで、どんな経験ができますか?

渡邊:KARTE Webチームにおけるタスクには、いま述べたような既存機能のリビルドから新機能開発まで、さまざまなフェーズのものが混在しています。それらを行き来しつつ、いろいろな種類の経験を積めるのは大きいです。また、職種や担当の区分けはあるものの、細分化された領域に閉じた作業だけを要求されるわけではないので「自分はこれをやりたい」という希望や意見があれば、個人の意思が尊重されます。

川島:渡邊さんが話してくれたように、KARTE Webチームではゼロからの立ち上げと、既存機能の改善の両方に、1つのチーム内で関われるんですよね。エンジニアやデザイナーとしてすごくバランスの良い経験が積めます。

石垣:プロダクトの成長のために、役割を超えて活動できるのは良いポイントだと思います。私自身、クエリを書けるようになって利用状況の分析をしたり、AI機能のPdMなど新しい挑戦もさせてもらっています。手を広げることにチームも協力的です。

――では最後に、みなさんの個人的な目標について聞かせてください。

川島:前職では複数の事業でKARTEを導入しており、私はかなりKARTEを使い込んでいたため横断で相談に乗ることも多かったのですが、契約更新するタイミングで、どれくらい事業に対する成果につながったのかというデータを出しきれず、契約を解除する選択に至った経験があります。そのことは今でも心に引っかかっています。

だからこそ、KARTEをより強く大きく事業を伸ばせる有効なプロダクトへと進化させていきたいです。今はその土台作りのフェーズだと思っていて、KARTEの開発を通じて、自分が理想とする世界観をどんどん実現していきたいですね。

渡邊:KARTEが今後顧客にとってもプレイド社内でも中核的な存在になっていくと、可用性や信頼性を高めるための守りの開発がより大切になるはずです。せっかくKARTE Webチームが組成されたので、将来に向けてさらにサービスを伸ばしていくためにも、自分としてはシステムの安定性を高めていきたいです。

石垣:データを扱えることで業務の質や働きかたが変わることを、私はプレイドに入ってから強く実感しました。でも、多くの場合はデータが扱いやすい状態になっていなかったり、データから何かを見つけることが難しかったりします。KARTEを通じて、より多くの人が「データって面白い」と思えるような体験作りをしていきたいです。

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