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IR note vol.1 CTO 牧野が語るKARTEの可能性

新たにプレイドIRチームのマガジン「PLAID's IR」を開設しました!
四半期決算説明会などの定期的な発信に加えて、今後こちらの「PLAID's IR」を通じて様々な切り口でプレイドに関する情報を主に投資家の皆様向けに発信して参ります!

プロダクトやビジネスを推進するマネジメントやメンバーがどのようなことを考えているのか、戦略の進捗はどうなのか、目指している方向性は何なのか、など定期的な場ではお伝えしきれない内容をこのnoteを通じて、より詳しく、丁寧にお届け出来ればと思っています。

記念すべき第1回は、メインプロダクト「KARTE」についてです!

IRの現場において、商品内容や競合優位性など数多くご質問をいただくテーマの1つです。
今回はそれらに加えて、普段お伝えしきれていない技術的な側面についてもお届けしたく、開発を担うCTO牧野に、設計思想や特徴、今後の展望などについて話を聞きました。

分析データを価値につなげる「KARTEの設計思想」

——牧野さんの経歴やプレイドへの入社経緯を教えてください

新卒でIBMソフトウェア開発研究所に入社し、主にインタラクティブな分析ツールの開発に携わっていました。2015年にプレイドに入社し、そこからはCTOとして主にKARTEの解析エンジンの開発を担当しています。
IBMで分析ツールを作っている時に感じていたのは、分析したデータが実際のサービスに活用される機会がすごく少ないということでした。データを活用しようという世の中の流れがある一方で、分析ツールが導入されたとしても、企業が提供しているサービスの基幹システムとは違うところに導入されるので、分析したデータをどう使うかという具体的な話にはなかなかなりませんでした。

そこには組織の壁もあったと思います。データを分析するデータ分析官がいる部門と、実際に分析結果を活用する部門、例えばマーケティング部門などが別であることが多かったように思います。
データを実際の現場で活かすためには、サービスを改善していくために何をしたいのか、その過程でどのようにデータは活用できるのか、できるとすればどういうデータが必要なのか、を逆算して考える必要があり、それがKARTEの設計思想に繋がっています。

——KARTEの設計思想とは?

KARTEは、ウェブサイトやアプリに来訪するユーザー1人ひとりの行動をリアルタイムに分析・可視化し、結果に応じた自由自在なアクションを可能にするツールです。ユーザーデータの収集・分析、アクション配信、これら全てをワンストップで実行できる点が特徴の一つです。

KARTEが導入されると、実際にユーザーと接していて、どうコミュニケーションしようか考えているサービスの現場で、データが使われる状態になる。それがすごく大事だと思うんですね。

現在KARTEは、顧客体験の改善に向けたあらゆる機能を提供するCXプラットフォームとして展開していますが、提供開始当初はWeb接客ツールとして展開していました。当初から分析やアクションの自由度を大事にしていて、色々機能はあったのですが、それよりも、Web上の接客を改善させるツールという分かりやすさを重視して、まずはデータが使われて実際のビジネス価値に転換されることを意識していました。単にデータを高度に分析するだけではなく、ユーザー接点から逆算し、分析したデータが活用されて、ユーザーに対する価値に変換される環境を、まず初めに作っていく、というのが、KARTEで大事にしているところです。

設計の観点で言うと、KARTEには、ユーザーとの接点でのコミュニケーションツールのような性質もあるし、ユーザーデータを蓄積し活用の幅を広げるデータベースのような性質もある。それを一つのツールで両立させようとしているのが面白いところですね。(下図ご参照)

具体のビジネス価値と汎用的テクノロジーの両面をKARTEは持っている。
これは倉橋(CEO)と柴山(CPO)の2人が創業者というのもあって、そのバランスを作ったのが一番のポイントだと思っていて、実際にデータを活用するデジタルマーケティングの現場にいた倉橋と、機械学習などデータの利活用に関する研究をしてきた柴山が、双方にとって面白いことをやろうとしたというのが、今のKARTEを作ったと思います。

KARTE Web/AppやKARTE RightSupportなど、各領域のプロダクトがユーザー接点として機能し、同時にユーザーデータが蓄積される。蓄積されたデータによって、企業は解像度高くユーザー1人
ひとりの状態を把握することが可能となり、適切なアクションに繋げることができる。

CTO視点から見るKARTEの特徴と優位性

——牧野さんが考えるKARTEの特徴を教えてください

プロダクトの柔軟性や汎用性だと思いますね。さまざまなアクションを柔軟に設計できる環境をベースとして作っておき、実際にやりたい事をその環境の上で実現していく。この柔軟性はKARTE開発当初からこだわってきました。

KARTEで実現できるユーザー向けのアクションは、ブラウザからユーザーデータを受け取って、KARTE内部で計算した後、ブラウザにアクションデータを配信して実行するという仕組みなんですよね。ブラウザはHTML、CSS、JavaScript、この三つの組み合わせで出来ているのですけど、KARTEから配信されるアクションはこれらの全てを管理画面上で編集できるように設計しています。なので、画面を書き換えたり、クリックすれば何かが出るように設計したいなとか、ブラウザで出来ることはKARTEで実現できてしまうんですね。

この柔軟性はプレイドが大切にしている、ユーザー1人ひとりに寄り添った顧客体験を提供するという思想に近いと思っています。ウェブサイトやアプリのインターフェースはユーザー視点だと結構インパクトがあるので、アクションの出し方とか、それらを細かく調整できることはCXの観点でも大切になる。なのでKARTEは基本的にはBtoBサービスなのですが、管理画面はtoBの先のユーザーを見据えてBtoCサービスを提供するために設計しています。さまざまなユーザーデータを単に固まりとして分析するのではなく、「こういう人が自分のウェブサイトやアプリに来てるんだ!じゃあ、ちょっとインタラクションの仕方を変えてみよう!」と感じてもらえるようにしたい。こういった設計は開発当初からかなり意識して作ってきましたね。

また違った観点の話になるのですが、KARTEのワンストップ性は、KARTEに対するROIに対しても非常に大きな役目を果たします。どういうことかと言うと、本来ならば企業がユーザー向けの施策を何かやろうと思った時には、企画→開発→実行という組織横断のプロセスを進める必要がある。
一方、KARTEを使えば、施策をやりたい現場が管理画面上でそのプロセスを完結できる。これによって、組織横断の依頼など従来発生していたコミュニケーションの時間が短縮されて効率が良くなります。開発は特に効果が大きいです。通常の場合、何らかのアクションを開発しようとするとIT部門やベンダーに依頼するケースが多いですが、リソースの問題などもあって完成までに時間を要する。その施策がうまく行かないとなるとやり直しすることになり、さらに時間がかかる。時間だけでなく、人件費や外注費といったコストも非常に大きいです。

しかしKARTEを入れることで、特別な知識やスキルがなくても、ある程度のアクションであれば現場で完結でき、PDCAをどんどん回せる、それだけでも大きな価値になります。KARTE導入によって売上やKPIが伸びる事も重要なのですが、そういった点に価値を見出してくれている企業もいます。

実は、こういったKARTEの特徴が、人の創造性を無駄なく効率良く、最終消費者の価値に転換することにつながる。”データによって人の価値を最大化する”というミッションにも繋がってくるんですよね。

——一方で、KARTEは使いこなすのが難しいという話も聞きます。

柔軟性や汎用性が高いって、何かやろうと思った時の具体をイメージし辛いというマイナス側面もあるので、それが使いこなすのが難しいという話に繋がっていると思います。

だからこそ当初はわかりやすくWeb接客(オンサイトマーケティング)ツールとして打ち出した。そこから多くの利用事例が生まれ、今ではオンサイトマーケティングに限らず、用途の幅が広がってきています。例えば、昨年リリースしたカスタマーサポートで使われているRightSupportや、サイト外のマーケティングを支援するSignalsなどです。具体的な用途の幅を広げていくことで、使いこなすのが難しいという点はクリアしていけると思っています。

ユーザーデータ量や種類は今後ますます増えていき、それに伴って企業のサービス現場におけるデータ活用ニーズも一層高まってくると思っています。KARTEは本当に汎用的で柔軟に色々なことが出来るわけですから、企業のニーズをしっかり捉えて、それに合わせた用途、価値を提供することで、現場や経営者に直感的に活用されるようにしていきたいですね。

——KARTEは汎用性と柔軟性を早い段階で重視していたということですね。一方で、世の中には特定の課題解決を謳うプロダクトも多くあります。KARTEが汎用性と柔軟性を優先した背景について教えてください。

背景は2つあります。1つはプロダクトを開発する、いわゆるプロダクトカンパニーとしての成長戦略。もう1つは、中長期視点で企業が扱いやすいデータ環境を提供したいというプレイドの思いです。

まずプロダクトカンパニーとしての成長戦略です。
これはプレイドに限った話ではないと思うのですが、例えば、ある企業が、何らかのプロダクトを開発するとして、開発段階からいきなり具体の用途を目的として設計してしまうと、企業としてそこから広がりを持たせていくってすごく難しい。ブランディングや販売手法、セールスやエンジニアなどの社内人材、企業の全てがそのプロダクトを前提として形成されるからです。その状態から別の何かを生み出すのは相当難しくなります。

一般的にスタートアップ企業は、第2の成長の柱を作るのが難しいと言われますが、その要因の1つには、具体の用途に基づいてプロダクト開発されている事が背景にあると思います。中長期で成長していくためには最初から汎用的に活用する目的でプロダクトを設計する方が望ましくて、その上で具体の用途があって、その具体が成長していく。そして汎用に戻るというサイクルであることが重要だと思っています。

次に、中長期視点で企業が扱いやすいデータ環境を提供したいという思いです。
先ほどもお伝えしたように、今後企業が扱うユーザーデータの種類はますます増えていくと思います。ユーザーデータの種類毎、つまり特定の課題解決のためにそれぞれ異なるプロダクトを利用すると、どうしてもデータはプロダクト毎に分断されてしまいます。実際は一人のユーザーに紐づくデータであるのに、それが切り離されてしまうのです。なんらかのサービスを利用して、データを統合しようにも、各プロダクトによって蓄積されるデータ構造が異なるため、統合作業は非常に難易度が高くなってしまいます。

その点、KARTEは汎用的で柔軟なデータ環境であるため、その上に特定の課題を解決するプロダクトが乗り、データ種類が増えたとしても、ユーザー単位で統合・整形されているなど企業が扱いやすい状態でデータが蓄積されるようになっています。ユーザーに適切な体験が還元されるためには、まずは企業が扱いやすいデータ環境が必要であると考え、汎用性と柔軟性を優先したということです。

——IRでは競合優位性や代替性に関する質問も多くいただきます。他の企業でもKARTEと同じようなプロダクトを作れるのでしょうか?

もちろん絶対作れないということはなく、時間をかければもしかしたら作れるかもしれない、ただ現実的には難しいと思いますね。

大前提として開発段階から汎用と具体のサイクルを意識して設計する必要がありますし、やはりノウハウも必要です。KARTEを動かしているエンジンは、データの柔軟性だけでなく、リアルタイム性も持ち合わせています。それらを両立させることは技術的にハードルが高く、実際、開発プロセスにおいてさまざまな困難が生じました。我々は長い時間をかけてそれを乗り越えてきたわけなので、このノウハウの有無は大きいと思います。どこかの企業が、KARTEと同等のエンジンを作ろうとそれなりのレベルのエンジニアを投入したとしてもなかなか大変だと思いますね。

仮に作れたとしても、我々はKARTE提供開始の2015年以降、日々膨大なユーザーデータを分析し続けているので、先行者として蓄積されたナレッジは高い優位性だと思います。

新解析エンジン「Blitz」が可能にした2つのこと

——エンジンの話が出ました。昨年度、解析エンジンを刷新しましたが、それによってどのようなことができるようになったのでしょうか?

この刷新により、稼働効率の向上と、完全なデータの一貫性の担保の2つを実現しています。

まず、稼働効率の向上ですが、KARTEはユーザーの状態を計算してアクションを配信するという仕組みですが、以前のエンジンではアクション配信のトリガーとなるユーザー情報以外のデータも含めて全て計算していました。これでは計算の負荷がかかる。
そこで新エンジンのBlitzでは、要は配信が出来ればいいので、アクション配信のトリガーとして必要なユーザー情報だけを計算する、という最適化を行いました。これによって必要なデータだけを計算してリアルタイムに返す形が実現し、エンジンの稼働効率が上がり、その結果サーバーコストの抑制にも繋がりました。

その過程で新たに生まれた機能が、完全なデータの一貫性の担保です。
Blitz以前のエンジンは、裏側で並列処理していたので、短時間に大量のユーザー情報を送ると別々のサーバーに送られることがあり、別々のサーバーで処理されている間はデータの一貫性が保たれないという事が起こり得ました。つまりユーザーの行動や文脈に沿った適切なアクションが取れていないケースも稀にあったという事です。

それがBlitzでは、データの一貫性を保ちながらアクションできるようになりました。技術用語で言うと、Eventually Consistencyという、分散データ処理の制約なのですけど、Blitzではそれが解消されて完全に一貫性があるStrong Consistencyという状態が担保されています。
詳細「Blitz(後編):リアルタイムユーザー解析エンジンを実現する技術 - 強整合な解析 -」

人の価値をどう最大化するか、今後のKARTEのあり方

——今後KARTEをどう進化させていきたいですか?

これまではリアルタイムにデータを分析して、それがアプリケーションとつながる環境を作ってきました。ただ、今話題のChatGPTみたいな複雑なマシンラーニングシステムにリアルタイム性を持たせるとなると、現状ではアルゴリズム的に結構難しい。蓄積したデータをマシンラーニングを使って分析すると色々なインサイトが得られるけど、それをリアルタイムに分析しようとすると結構制約がかかってしまいます。
なので、全てをリアルタイムでやるということではなく、バッチの部分で分析する機能をKARTEに取り入れていくべきだと考えています。それは今でもKARTE Datahubなどを活用すれば出来ますが、KARTEの中でもっと色々やれるようにしていきたいと考えています。

一方で、マシンラーニングの活用にはこだわりポイントがあります。ユーザーの事を理解したいと思う人が施策に絡むことが出来る状態にすることです。全て機械に任せて自動化、最適化するということは、少なからずブラックボックスになってしまうところがあって、なぜその結果になったのかという中身が見えなくなってしまいがちです。全てを機械に任せると、どういうユーザーがきているのか理解が薄くなったり、そのユーザーに対して何をしたらいいか発想する機会が減ったり、また、企業として最も大切なものだと思うんですが、その試行錯誤の過程で生まれるナレッジが会社やチームに蓄積されにくいですよね。

これは「データによって人の価値を最大化する」というプレイドのミッションにも繋がっています。そのために人が考えなくていいところは積極的に自動化を進めるのですが、最後は人がちゃんとコントロールできることを担保した上でマシンラーニングを活用し、大事なところは人が介在することでより大きな価値を生み出せるようにしていきたいですね。

企業の事業を支援する観点でもKARTEは良いところを押さえていると思っています。事業において重要なのは、自社にとって大切なユーザーはどういった人かという理解と、そのユーザーに対して適切なアクションが取れているか、だと思っています。

少し前からLTVに注目が集まってますが、事業を成長させる上では、やはりユーザーと適切な関係を構築し全体のLTVを拡大させていくことが重要ですよね。そのためにはユーザー1人ひとりのLTVを把握する必要がありますが、それをやろうとするのって結構大変なのです。しかし、KARTEであればそれができると思ってます。今後は、開発とは違うそういった観点でもKARTEの価値を見せていきたいですね。

みんなにも読んでほしいですか?

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